精巣特異的細胞間結合を欠損すると雄性不妊になる。本研究では精巣特異的細胞間結合の中でも生殖細胞同士をつなぐIntercellular bridge(ICB)に着目している。細胞間輸送や協調など機能が予想されているが、その存在意義は未だに不明である。構成因子を網羅的に解析する事により、基礎繁殖生物学の研究として、マウス精子形成におけるICBの意義、特に物質輸送の有無とその機能に関わる因子の同定に近づくことを目的とする。成果は、雄性不妊の原因解明および不妊治療、基礎研究における精子体外培養へのヒントなどが期待される。また、応用としてヒトの他に畜産動物・野生動物にも利用が期待できる。 精巣からのICB濃縮精製を行い、タンパク質およびRNAを回収した。ICBにはRNA、特に多くの低分子RNAが特異的に結合していた。ICBタンパク質抗体を用いたRNA免疫沈降(RIP)物から高分子、低分子RNAに分けて回収、網羅的なRNAシークエンス解析を行った。 精巣特異的細胞間結合の網羅的解析により、精巣特異的Ectoplasmic Specialization (EPS) に関連する新規タンパク質、KIAA1210を同定した。また、その機能関連タンパク質Topoisomerase2Bも同定し、その詳細な局在から機能を示唆した。RBM44の代替RNA結合タンパク質および、そのターゲット遺伝子の同定も本研究の目的の一つであったが、このKIAA1210もRBM44と近い関係性で複合体を形成することが分かり、ノックアウトマウス作製および解析を現在も行っている。KIAA1210ノックアウトマウス解析は若手研究B(平成29年~)で解析が続けられている。
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