ヘモグロビン酸素飽和度 (sO2) の計測は、正常な血液循環や疾患発症の指標、がん放射線治療の増感効果の予測に重要である。本研究では、超偏極や化学交換飽和移動法 (CEST)により、がんや疾患部位における sO2 のその場測定を実現可能な、新たな CEST プローブの開発と応用計測を目的としている。 前年度に見出した、化学交換飽和移動法 (CEST) により血中の酸素飽和度変化の観測を可能とする候補分子について、以下のような検証実験に成功した。 1. 麻酔下で担癌モデルマウスに候補分子を尾静注し、担癌より BOLD-MRI シグナルが上昇すること を確認した (赤血球ヘモグロビンからの酸素放出作用による、デオキシヘモグロビン濃度の上昇)。 2. 同様に、候補分子に由来する特異的な CEST シグナルを、担癌より取得することに成功した。 3. がん放射線治療において重要な、組織内酸素飽和度の変化を観ながら治療を実施する「ラジオセラノスティクス」への応用性を証明する研究を検討中である。
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