本研究は気体中の非線形伝搬に基づく手法を発展させた高強度モノサイクル光パルス列発生法の研究と、それを基にした新たな光イオン化量子制御とモノサイクル時間分解光イオン化分光の実現を目的とする。つまり、これまでにない簡便かつ安定な高強度モノサイクル光パルス発生手法とそれに基づく新しい光イオン化分光法の開拓である。 平成27年度は高強度モノサイクル光パルス列発生法の研究とその波形計測法の研究に重点を置いた。特に、イオン化分光研究への移行を念頭におき、応用に直結した光源と計測法を方針とした。具体的には、波長800 nm、1200 nmの2色の高強度フェムト秒レーザーパルスを空気中に集光して多色フェムト秒レーザー光を発生させ、それらをフーリエ合成した。先行研究よりも高い強度の入射フェムト秒レーザー光を用い、集光条件、2色のフェムト秒レーザー光間の時間遅延等諸条件に対する依存性を研究した。効率が大幅に向上し、深紫外域まで多数の多色光が発生した。光イオン化量子制御においては高強度の多色光を含むモノサイクルパルス列が必要となり、高効率の多色光発生は不可欠な要素である。また、空気中でのフィラメント形成が観測され、長い相互作用長が実現されていると同時に異なる相互作用が生じていることが裏付けられた。 次に、モノサイクルパルス列を形成する多色光の相対位相計測法を研究した。既存手法の周波数分解光ゲート法をモノサイクルパルス列位相解析に適用した場合解析が容易ではなく、迅速性と簡便性に乏しい。光源を分光応用する際この点は大きな障害となる。そこでモノサイクルパルス列を結晶に入射して透過光のスペクトルを計測する、非常に簡素化された手法を研究した。得られた結果と数値シミュレーション結果を比較したところ、両者が良好に一致し、相対位相を非常に簡易に評価できることが明らかとなった。
|