本研究では、貴金属触媒を用いて報告されてきた不飽和結合の還元反応を、安価で低毒性な第一周期遷移金属 (卑金属) を用いて代替することを目的とした。ジシラメタラサイクル骨格を有する鉄錯体1は常温・常圧でのアルケンの水素化が可能であったが、理論計算の結果から、H-H結合がFe金属中心上ではなくFe-Si結合上でσ結合メタセシス的に開裂することで効率的に活性化される反応経路を見出した。更に金属種や配位環境が異なる場合にも本システムが適応可能であることを実験および理論の両観点から示した。これらの知見を基に、鉄-ケイ素結合を有する改良型の触媒を合成し、還元が困難とされる四置換アルケンの水素化を達成した。
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