研究課題
本研究課題は、近年急速に光電変換特性が向上し、低コスト高効率の塗布型太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池に関するものである。従来のペロブスカイト太陽電池はハロゲン化金属材料に鉛化合物を使用しているが、本課題では鉛代替として有力なスズを用いたペロブスカイト薄膜の結晶成長制御と、熱刺激電流測定によるキャリアトラップ分布の相関を明らかにすることを目的とする。昨年度、高純度のヨウ化スズ錯体を合成し有機溶剤への溶解性を向上させた、スズ系ペロブスカイト前駆体溶液を使用し、スピンコート成膜中に貧溶媒滴下によって結晶核を形成する方法で、平坦で欠陥が少なく高い起電流を得る事に成功した、しかしながら光電変換効率は4.5%程度と鉛の20%に比べてまだ低い状態であった。前年までの課題に対して、ペロブスカイト結晶の光電変換ロスが電子輸送層(酸化チタン)からの電荷再結合が原因ではないかと推測された。そこで、ヨウ化スズとヨウ化鉛で表面処理した酸化チタンのキャリアトラップ分布を熱刺激電流で解析した結果、ヨウ化スズで表面処理すると酸化チタン表面の浅いトラップが増加していることが判明したため、酸化チタンを用いない積層構造を導入することで、光電変換特性は4%から7%へ改善した。また、スズ系ペロブスカイト薄膜の欠陥を、光音響分光測定や熱刺激電流測定で解析した結果、比較的深いエネルギーに結晶欠陥が判明し、この欠陥は金属スズの欠乏によるものが元素分析から推測された為、フッ化スズの添加による金属欠陥を補う手法を試みた結果、12%の光電変換効率が得られた。さらに、金属以外の添加材を耐久性の高い材料に変更しスズの含有量を60%に増加させて課題開始時に4.5%だった光電変換効率を15.9%まで引き上げる事に成功した。
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ChemSusChem
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