研究課題/領域番号 |
15K21230
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田代 将人 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (20713457)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 侵襲性肺アスペルギルス症 / 診断 / 肺血流SPECT |
研究実績の概要 |
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA:Invasive Pulmonary Aspergillosis)は近年増加の一途にあり、致死率が高い疾患である。その病態には不明な点が多く、早期診断方法や治療評価方法などが十分に確立されていない。我々はIPAでは血管侵襲により血流障害が起こる特徴に着目し、SPECT/CTイメージングによる肺血流評価の手法とIPAモデルマウスを用い、新たな診断方法、治療評価方法の開発を試みた。はじめに、IPAモデルマウスの肺血流SPECT/CT撮影条件を設定した。その後、アスペルギルス感染前後の肺血流SPECT/CT撮影を行い、IPAマウス肺の継時的な画像評価を行った。実験の結果、感染4日後の胸部CTで肺野に浸潤影が出現し、肺血流SPECTで同部位の肺血流低下が認められた。CTでの浸潤影、肺血流SPECTでの肺血流低下は、感染7日後がピークであり、14日目以降徐々に改善していった。さらにCTで浸潤影が出現する前に、肺血流SPECTで血流低下を認めた個体が確認され、CTで回復が見られた後も肺血流SPECTで血流欠損が残存している個体が確認された。これらの実験結果により、肺血流SPECTを用いた肺血流の可視化は、CTよりも早期診断、長期予後予測に有用である可能性が示唆された。さらに、IPAに特異的な所見を明らかにするため、細菌性肺炎モデルマウスのSPECT/CT所見と比較した。細菌性肺炎モデルには緑膿菌肺炎マウスモデルを使用した。同モデルで継時的にCT/SPECTの撮影を行ったところ、CTで浸潤影を呈した部位に一致して肺血流の低下が確認されたが、血流低下は均一・広範囲にみられ、局所的に肺血流が大きく低下するIPAモデルマウスとは特徴が異なっていた。これらの結果により、肺血流SPECTが肺浸潤影を呈する疾患の鑑別にも有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在3年計画で実験を遂行しているが、最初の1年で当初の予定通りマウス肺血流SPECTの条件設定に成功し、さらに実際に侵襲性肺アスペルギルス症を肺血流SPECTで評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに病理学的評価を加えていき、肺血流SPECTにおける欠損部位と実際の病巣との関連について検討を行っていく。さらに、緑膿菌肺炎モデル以外の細菌性肺炎モデルや敗血症性肺塞栓モデル、他の糸状菌感染モデルを肺血流SPECTで評価を行い、侵襲性肺アスペルギルス症の診断に対する肺血流SPECTの特異性について検討を加えていく。 PET/CTの有用性についても検討していく予定である。 診断における有用性を検討した後、抗真菌薬による治療評価法としての肺血流SPECTの有用性についても検討を加えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の効率化および旅費を他の経費より支出したことにより、予定の使用額よりも少額で研究の遂行および研究成果の発表を行うことが出来たために次年度使用額が生じた。研究の進捗状況は順調であり、さらに研究が進展することも見込まれ、今後は国際学会における研究成果の発表のため旅費の使用も予定していることから、次年度使用額および翌年度分として請求した助成金を要する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、主に肺血流SPECT実験およびPET/CT実験に必要な実験経費および研究成果発表を目的とした国際学会・国内学会の旅費に使用する予定である。
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