最終年度は、募集を行った就学前の知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害幼児(以下、研究協力児)の基礎的な弁別課題において、ICT教材(タブレット教材)を用いた個別指導を行った。ICT教材は、子どもの多様な実態、学習目標および興味に対応できることを想定して作成された。ICT教材が自閉症スペクトラム障害児の早期教育のポジティブな指導効果の必要条件の一つとされる「指導の頻度」を無理のない形で満たすための代替手段となるかを検討するため、週1回の大学で行う個別指導において行うICT教材を用いた個別指導の学習効果と、家庭においてICT教材とマニュアルを貸出し、ICT教材を用いた個別指導を保護者が実施する学習効果について、単一事例研究法を用いて比較した。その結果、大学のみでICT教材を用いて個別指導を行った条件における学習効果と比べ、家庭において保護者が貸し出したICT教材を用いて個別指導を行った条件の方が、より高い学習効果(目標とする学習および学習の般化)が示された。さらに、保護者からは、研究協力児から自発的にICT教材にアクセスし、課題を要求する様子が報告された。以上のことから、作成されたICT教材は、先述した自閉症スペクトラム障害児の早期支援における「指導の頻度」を、無理のない形で満たすための代替手段となる可能性が示された。また、ICT教材そのものが自閉症スペクトラム障害児においては、課題従事への動機づけとなる可能性も示された。これらの成果および教材については、今後も学会やホームページ等で公表する予定である。
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