研究1) 各種消化管癌臨床症例におけるPDDの有用性:バレット食道癌4例では、PDD蛍光が確認され、上皮下進展の診断に有用な可能性が示唆された。食道癌での検討では、現在、光線力学的療法(PDT)10症例を行っているが、食道癌および炎症性腸疾患関連発癌においては、症例頻度から長期間・多施設でのエントリーが必要と考え、別途、共同研究として展開することとした。拡大内視鏡観察所見とPDDの有用性の比較をしていく。 研究2) 各種癌細胞株および消化管癌マウス皮下移植モデルにおける検討:分化度の異なる胃癌細胞株MKN-45、MKN-74、KatoIIIを用いて5-ALA-PDDの蛍光差異を検討した。UV照射および臨床用プローブで観察し、いずれも明瞭な赤色蛍光は観察されなかった。マウス皮下移植モデルでは、in vitroの検討で顕著でなく、同所移植モデルの方が有用と思われ変更した。 研究3) 癌分化度によるPDD蛍光差異の検討:MKN-45とMKN-74細胞のPEPT1、ABCG2発現をqPCRにて確認し、PEPT1はMKN-45細胞で、ABCG2はMKN-74細胞でより高発現で差異があった。しかし、実際の蛍光強度には差異はなかった。胃癌臨床症例の5-ALAによるPDDでは、症例を追加し検討した。27病変ではPDD陽性、印鑑細胞癌を含む8病変ではPDD陰性であった。蛍光視認性向上のために、富士フィルム社製内視鏡システムの分光推定処理FICE画像を用いたが、蛍光強調にはいたらず、フィルターの工夫が必要である。臨床組織検体においてPEPT-1、ABCG2、CPOXの免疫染色を追加検討した。PEPT1では高分化癌で高発現、CPOXは印鑑細胞癌では全く発現が見られず、5-ALAの細胞内の取り込みと排泄、ポルフィリン代謝の差異が分化度によるPDD蛍光強度差異に関与していることを明らかにした。
|