SIRT7はNAD依存性の脱アセチル化酵素である。申請者はSIRT7が脂質代謝に重要な核内受容体型転写因子であるTR4のタンパク質安定性を制御することで、肝臓における脂質蓄積を制御することを見出した(Cell Metabolism 2014)。またそのメカニズムとして、SIRT7はDCAF1/DDB1/Cul4B E3ユビキチンリガーゼ複合体に結合し、その活性を抑制することでTR4の発現量を増加させる働きをもつことを明らかにした(Cell Metabolism 2014)。 本研究ではSIRT7がCul4B E3ユビキチンリガーゼ複合体の活性を抑制する分子メカニズムについて検討を行った。プルダウンによる検討により、SIRT7はCul4 E3ユビキチンリガーゼ複合体の構成分子であるCul4BやDCAF1には結合しないが、DDB1と結合することが判明した。DDB1の欠失変異体を用いた検討の結果、SIRT7はDDB1のC側領域に結合することが判明した。SIRT7とDDB1発現ベクターを293T細胞に遺伝子導入し、免疫沈降法により両者の結合について検討を行ったところ、SIRT7とDDB1の結合が確認され、SIRT7とDDB1は細胞内においても結合することが判明した。次にリシンアセチル化特異的抗体を用いたwestern blot解析を行ったところ、SIRT7の発現によりDDB1の脱アセチル化がおきることが判明し、SIRT7はDDB1に結合し脱アセチル化することでE3ユビキチン複合体の活性を抑制しているものと考えられた。今後はDDB1のアセチル化状態がE3ユビキチン複合体の活性に及ぼす影響について検討を行う予定である。
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