研究課題
肥満や糖・脂質代謝異常と関連した分子機序が乳癌進展にどのように影響するか、そしてこれらの機序が優位な乳癌亜型を抽出すべく検討を行っている。乳癌患者252名の診断時血中脂質値を調べると、中性脂肪は乳癌各種受容体に応じた変動が観察され、一方コレステロールでは比較的一定であったため、乳癌における脂肪酸の役割を検討した。脂肪酸受容体の発現が確認された乳癌細胞株を用いて、培養液中の脂質レベルをコントロールしたうえで、脂肪受容体アゴニストにて刺激を行うと、細胞増殖が亢進し、また3D培養におけるスフィア形成数の増加を認めた。一方で、脂肪酸受容体を阻害すると細胞増殖の抑制が観察された。次に乳癌細胞株ゼノグラフトマウスモデルに対し、脂肪酸受容体阻害剤を用いた抗腫瘍性試験を行うと、一時的な増殖抑制効果を認めその後は再増大を示した。従って、脂肪酸受容体経路の阻害に対する代償・耐性機序の存在が推測された。メタボローム解析にて脂肪酸受容体阻害時の代謝変動を調べると、乳癌細胞は脂肪酸枯渇に伴う変動と酸化ストレス状態を呈する一方で、代償的な代謝回路が働いていることが示唆された。患者アーカイブ検体及びパブリックデータベースを用いて、脂肪酸受容体遺伝子発現と乳癌臨床転機との相関を検討すると、特定の集団においては予後不良因子となる可能性が示された。今後は脂肪酸受容体阻害に伴う代償機序を阻害する二重阻害の検討や、代償経路が働かない乳癌亜型の特定を、乳癌細胞株及び乳癌患者組織移植モデルを用いて行い、脂肪酸受容体経路と乳癌進展に関する検討を行っていく。
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