研究課題/領域番号 |
15K21242
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
門出 和精 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (70516137)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ヒト内在性レトロウイルス / HIV-1 |
研究実績の概要 |
本研究は、宿主細胞でヒト内在性レトロウイルスの発現機構を解明し、その発現を増幅させることによりヒト外来性レトロウイルスの増殖が抑制するか明らかにすることを目的としている。本研究はヒト内在性レトロウイルスがヒト外来性レトロウイルスに干渉するか、また内在性レトロウイルスが宿主細胞の多様性に関与するかを知るための重要な知見となることが期待される。 以前の研究で、ヒト内在性レトロウイルスを強制発現させた細胞では、ヒト外来性レトロウイルスであるHIV-1の増殖を抑制することがわかっていた。本研究では、その抑制機序と抑制に関与するドメインの同定を行った。その結果、ヒト内在性レトロウイルスのGag蛋白質のCAドメインが、HIV-1 Gag蛋白質と相互作用し、HIV-1の放出を抑制するだけでなく、成熟ウイルスの数を減らす事で、感染性を劇的に低下させることがわかった。これらの現象は2つの別の機序によって起こっている事がわかった。以上のことから、ヒト内在性レトロウイルスは健常人では潜伏しているが、外来性レトロウイルスが感染することによって、その発現が誘導、干渉し、外来性レトロウイルスの増殖を抑制する働きがある可能性が考えられる。この研究は既に完了し、現在論文を投稿段階である。 また本研究により、「① HIV-1宿主細胞でのヒト内在性レトロウイルスの発現機構の解明」については、ヒト内在性レトロウイルスの発現機構に関与する重要な因子を同定した。それについてはデータを集めている段階で、5月に国際学会で発表し、本年度中に論文を投稿する計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では3つのことについて計画していた。 ①HIV-1宿主細胞でのヒト内在性レトロウイルスの発現機構の解明については、順調に遂行しており、転写に関与する重要な因子を同定した。その因子は、胚細胞で発現するだけでなく、Cancer stem cellsでも発現することから、そのような細胞でヒト内在性レトロウイルスが発現する可能性が示唆された。ここまでの研究については5月の国際学会にて発表を行う。 ②HIV-1感染細胞に内在するHERV-KがHIV-1の増殖を抑制するか解析することについては、現在論文を申請中である。また、HERV-Kノックダウン細胞でHIV-1の増殖が加速する機構については、現在検討中である。 ③ヒト内在性レトロウイルスがヒト外来性レトロウイルスにも影響するか検討することについては、まだ研究を行っていない。当初の予定どおり次年度の研究で遂行する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
①HIV-1宿主細胞でのヒト内在性レトロウイルスの発現機構の解明については、今年度中に、この因子が発現することで、ヒト内在性レトロウイルスが活性化し、レトロトランスポゾンによりゲノムを編集するかどうかについて検討を行う。この研究結果は、本研究計画の中でインパクトが高いことが期待されるため、場合によっては、本研究に焦点を絞り、研究を遂行することを考えている。今年度内には研究成果をまとめて、論文を申請する予定である。 ②HIV-1感染細胞に内在するHERV-KがHIV-1の増殖を抑制するか解析することについては、HERV-Kノックダウン細胞を用いて研究を遂行する。論文を申請することを視野に研究結果を集める予定である。 ③ヒト内在性レトロウイルスがヒト外来性レトロウイルスにも影響するか検討することについては、まだ検討を行っていない。①と②の研究と平行してデータを集め、年度内には研究結果をまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度内に論文を投稿する予定であったが、次年度になったために、そのための金額が繰り越すことになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
論文投稿費として使用する。
|