研究実績の概要 |
ヒト内在性レトロウイルスは、胎盤形成や生体防御に重要な役割を担っている。一方で、癌や神経疾患など様々な疾患に関与することで注目されている。ヒト内在性レトロウイルスは、発生初期に発現することはわかっているが、その発現機構についてははっきりとしていない。HIV-1、HTLV-1感染者でヒト内在性レトロウイルスの発現が増幅することから、レトロウイルス間での干渉に注目して研究を行う。そこで、本研究では3つの研究を遂行した。 ① HIV-1宿主細胞でのHERVs発現機構を解明する。本研究により、HERV-Kの発現にSOX2が必須であることがわかった。SOX2を発現するiPS細胞で高発現する因子でありHERV-Kが高発現することがわかった。次世代シークエンス解析により、iPS細胞で、HERV-Kはレトロトランスポジションによりゲノムを転移することがわかった(論文作成中)。 ② HIV-1感染T細胞に内在するHERV-KがHIV-1の増殖を抑制するか解析する。HERV-K GagがHIV-1の放出抑制や感染性低下に関与する機構を解明した(2017, Retrovirology)。 ③ HERV-K Gagは、ヒト外来性レトロウイルスHTLV-1の増殖にも影響するか検討する。HERV-K GagはHTLV-1の複製に関しては影響しないことがわかり、HERV-Kのヒト外来性レトロウイルスへの干渉には特異性があることがわかった。②の研究より、内在性レトロウイルスの干渉にはHERV-K Gag CAドメインとHIV-1 Gag CAドメインが相互作用する必要があり、そこで特異性を決めている可能性が示唆された。
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