研究実績の概要 |
本年度は2015年12月中旬より2016年1月初旬にかけて、大英博物館にてナポリ大使ハミルトン卿日記史料(Egerton MS 2634, 2635, 2636, 2637, 2638, 2639, 2640, 2641)の調査と複写を行い、記述内容の検討を進めた。仮説では、ナポリ王国のイギリス海軍導入に関して大使に様々な打診が寄せられ、なかでも「オペラ」を通してナポリ王国の意向が示されたことについて、ハミルトン卿は本国イギリスに報告していたものと考えていたが、当該年代の史料(Egerton MS 2638, 2639)に、当該月の史料がなく、またその年代前後の史料群においても劇作品に関して個人的な感想等を記載していないことを確認し、つまり、本研究の当初の仮説の検証は、さらに別角度から行わなくてはならないことを確認することができた。 ただし、上記調査時には同時に、本研究テーマにも密接に結び付くナポリで上演されたオペラの筆写譜群の複写を進めたほか、イタリア音楽研究者チャールズ・バーニーのイタリアオペラ調査史料の調査を行うこともでき、これらをもとに在日オーケストラとそれら作品の復活上演の準備を進めるきっかけを得ている。またあわせて、研究テーマと同時期の楽器の現代レプリカ製作者を訪問し(オランダのバロックファゴット製作家デ・コーニング氏)、当時の楽器の状況や特徴についての知見を深めることができ、以上全体の研究活動を通して、18世紀のナポリのオペラについて総合的な観点からの調査を進めているということができる。
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