研究課題/領域番号 |
15K21243
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山田 高誌 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10580665)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナポリ / 劇場 / 公証人 / オペラ史 / イタリア / 音楽史 |
研究実績の概要 |
本研究テーマにかかわる28年度中の主な活動は、おおむね研究計画で予定していた通り、7月のナポリ公証人文書館での劇場史料調査の実施とIAML国際大会(ローマ Parco della musica)への参加、そして11月に実施した同文書館調査、および、イタリア国立アヴェリーノ音楽院でのチマローザに関する専門的国際学会での発表から構成されている。 研究成果の一部は、国内論文(「公証人史料にみる、18世紀ナポリの民間劇場の利用条件:オペラ興行師と演劇興行師の劇場共同利用」『熊本大学教育学部紀要65(2016)』171-193)で発表したが、そこでは当該テーマの初の日本語文献という観点から、公証人史料という特殊な研究対象について、文書館、史料、手法を概略した後、当該史料の全訳を行い、国内のみならず国際的な劇場研究にとってきわめて貴重な一次史料であることを示している。さらに現在準備中のイタリアでの共著(チマローザの国際学会に基づく論文集)、および国内共著(オペラに関する専門書籍)においても同様、本研究成果に基づき執筆を行っている。 またアウトリーチについても、講演(イタリア文化会館大阪、民主音楽博物館関西館)、公開授業(立教大学、熊本大学グローバル教育カレッジ)、公演実施(熊本・八千代座においてのコメディア・デラルテ公演、解説)等を通して積極的に行っている。 以上、本研究テーマに関する調査、公刊は、研究計画におおむね沿う形で進捗しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度中の2度にわたるナポリでの調査、および国際学会への参加(IAML国際大会:於ローマ、チマローザに関する国際学会:於アヴェリーノ音楽院、国際音楽学会国際大会:於東京藝術大学)、論文発表(熊本大学教育学部紀要)、ほか共著2点(イタリア、日本)を準備しており、本研究テーマに関する調査、および公表を順調に進めているといえる。 ただし28年夏より、ナポリ公証人文書史料は18世紀史料についても順次ナポリ公文書館へと移管を進めており、29年度の調査においては、同史料の閲覧、複写が非常に困難になると予想される。(ナポリ公文書館ではデジタル的複写を一切認めていないため)。そのため、ナポリ公文書館での調査と平行し、これまでに蓄積してきたデータに基づく新史料(楽譜)の調査をフィレンツェのイタリア国立ケルビーニ音楽院付属図書館でも行い、本研究テーマの広がり、および展開を確保していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、6月から7月にかけて、ナポリ公文書館へ移管された“旧”ナポリ公証人文書館史料の調査を行うとともに、これまでの研究によって同定されたフィレンツェ・ケルビーニ音楽院に残されていることが新たに判明した神聖ローマ帝国皇帝レオポルトII世によるチマローザ・オペラ楽譜筆写譜コレクション(演奏用パート譜を含む)のプレ調査を行う。 それら成果をアヴェリーノ音楽院で昨年より開始された作曲家チマローザの研究プロジェクトメンバーと共同で共有し(現在共著を準備中)、チマローザの生地アヴェルサで行われる予定となっている「チマローザ音楽祭」へと還元できるよう、国際研究ネットワークの中で本研究テーマをさらに展開、推進させていく予定である。
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