研究課題
圧負荷により生じる心房の炎症・線維化及び心房細動受攻性亢進における脾臓の役割は不明である。そこで我々は脾臓摘出が圧負荷誘発性の炎症・線維化を増悪させると仮説をたて検証を行った。6週齢の雄SDラットを擬似手術(Sham)+Sham群、Sham+脾臓摘出(SPX)、腹部大動脈縮窄術 (AAC)+Sham群、 AAC+SPX群に分け2、4、14、28日目に各種評価を行った。また,新生仔ラットの心筋線維芽細胞と心筋細胞を用いてストレッチによる炎症・線維化シグナルの評価を行った。①4日目の時点で,Sham+Sham群と比較しAAC+Sham群の方が脾臓、血中、左房組織におけるIL-10レベルは上昇した。しかし,脾摘を併せて行うことで(AAC+SPX群において),血中及び左房組織のIL-10レベルは有意に低下した。そのため,脾臓由来IL-10の消失が重要な変化であると考えAAC+SPX群にIL-10を補充したAAC+SPX+IL-10群を追加し,5群で検討することとした。②28日目の時点において、AACを施行した群で認められた左房間質の線維化はAAC+SPX群で有意に増悪した。心臓電気生理検査では、圧負荷誘発性の心房間伝導時間延長及び心房細動持続時間が脾摘により増悪した。③AAC+SPX+IL-10群では,AAC+SPX群で認められたSPXによる心臓への悪影響が有意に抑制されていた。④圧負荷と類似の負荷として,ストレッチ負荷を培養細胞に与え評価したところ,心臓線維芽細胞において認めたα-SMA・MCP-1発現の亢進がIL-10の投与で抑制された。心筋細胞においてはp38-MAPKのリン酸化がIL-10の投与で抑制された。脾摘は圧負荷誘発性の炎症・線維化、心房細動受攻性亢進を増悪させることが示唆された。これは脾臓由来IL-10の消失が主原因と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
高血圧モデルラットにおける脾臓の役割を英文論文として報告することが出来た。糖尿病モデルマウスにおける脾臓の役割に関しては現在検証中である。
糖尿病モデルマウスにおいて脾臓を摘出した後の心臓の変化を検証しているが、糖尿病でおこる心臓の異常として洞機能不全があるためその変化が脾臓摘出でどのように変化するかを確認していく方針である。
計画通りに使用していたが、価格の変動があったため。
1円を今年度の物品に合わせて使用する。
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Heart Rhythm
巻: 1 ページ: 241-250
10.1016/j.hrthm.2015.07.001.