研究課題
膵癌は、数ある癌の中でも早期発見はもちろん、治癒を望める段階での診断が困難な難治性の癌である。それゆえ、膵癌の早期診断法の確立、さらには最近注目されている膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の悪性度判断法の確立が望まれている。本課題においては、これまでに構築した『悪性度判別モデル』を用いて、さらなる臨床検体における膵腫瘍の悪性度判別力の評価や、膵癌の早期発見や発癌リスク評価を含めた有用性を評価することを目標としている。初年度は、膵癌組織検体・膵液検体におけるムチン抗原の発現状況、ムチン遺伝子のメチル化解析データと臨床データをつきあわせて、関連性の精査を目的とし、手術施行例について、画像診断をはじめとする術前検査データ、手術摘出標本のファイル、詳細な臨床経過と長期予後のデータが系統的に整理保存されているサンプル用いて実験を行った。各種ムチン遺伝子(MUC1・MUC2・MUC4)を対象に、癌患者より採取した臨床検体のDNAメチル化解析をMSE法にて行った。加えて、同一検体のムチン発現状況を免疫染色・リアルタイムPCRで解析、DNAメチル化関連因子の発現状況解析を行い、臨床データとつきあわせて集積した。その結果、膵組織検体においても、ムチン遺伝子の発現状況とその遺伝子のメチル化状況に有意な相関を見出すことが出来た。興味深いことに、早期膵がんにおいて、MUC4遺伝子の脱メチル化は予後不良因子であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
膵臓臨床検体として、組織検体として169症例(267サンプル)の解析を行を行い、コンスタントに症例の集積を行うことができた。また、前向きコホート群の症例の集積も行えたことによる。
前年度と同様に、膵液症例の解析を推進する。加えて、DNAメチル化解析データとムチンの発現データ・予後等の病理学的パラメータとの関連性を検討し、『悪性度判別モデル』による腫瘍の悪性度判別や癌検出の感度・特異度を評価する。後ろ向きコホートを用いた検討で、判別結果と臨床経過・予後を比較し、当該モデルの臨床的な有用性を評価する。
各種試薬の購入および消耗品の購入を予定していたが、当該研究室に既存の物品で賄えたことにより不要となった。
前年度に集積した未解析検体の解析を行うために、今年度は追加に各種試薬の購入および消耗品の購入を行う必要がある。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
Pancreas
巻: 44(5) ページ: 728-34
10.1097/MPA.0000000000000362
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~byouri2/