研究課題/領域番号 |
15K21250
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
定松 直 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (10709554)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 超高圧電子顕微鏡 / 電子線トモグラフィー / 転位 / 脆性-延性遷移 / 靭性 / 力学的性質 |
研究実績の概要 |
金属材料における亀裂先端での転位の増殖過程の解明は, 破壊の物理分野に残された最も基礎的課題の1つである.脆性―延性をメゾスコピックスケールにおいて支配しているのは亀裂先端における転位の増殖である.それ故,金属材料の脆化を根本から理解するには, 亀裂先端における転位の増殖過程を詳細に明らかにすることが必須と考えられる.本研究では,シリコンおよびタングステン単結晶を用い,転位の3次元構造解析法の1つ「TEM-tomography」を「より厚い膜の試料」, 「時間分割」で行う手法を確立し, 結晶材料脆化現象の本質に直結する「亀裂先端転位の増殖過程」を観察すると共に, そのモデル化に挑む. より厚い試料の観察のために九州大学所有の超高圧電子顕微鏡(JEM-1300NEF)を用いて観察を行う.また,時間分割で観察を行うために,試料を電子顕微鏡内で加熱し,加熱による熱応力と熱それ自体を駆動力とし,亀裂先端の転位を増殖させる.試料にはすべり系が少なく観察しやすいシリコンと実用金属のモデル材料として原子炉材料のタングステンを用いる. 本年度はシリコンを用いた電子顕微鏡内で試料加熱により転位を駆動させる技術の確立に終止し,加熱によってシリコン中の転位が運動する様子を観察することに成功した.本年度確立した技術を用いて来年度以降,原子炉材料であるタングステン中の亀裂近傍に発生した転位の静的な観察,及び動的な観察を行い,亀裂先端で発生する転位の増殖過程を解明する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はシリコンを用いて,電子顕微鏡内で加熱することで亀裂先端近傍に転位を発生させる技術の確立を目的としており,それが達成されたため.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度確立した技術を用いて来年度以降,原子炉材料であるタングステン中の亀裂近傍に発生した転位の静的な観察,及び動的な観察を行い,亀裂先端で発生する転位の増殖過程を解明する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
簡潔に述べると,効果的に研究を進めた結果,本年度の使用額が小さくなったためである. 今年度購入する予定であったタングステン材料であるが,材料の選定に手間取り,今年度内に購入することができなかった.来年度速やかに購入する予定である.また,消耗品についてはほとんど備蓄していたものを使用し,補充は行わなかったため,予定より使用額が少なくなった.さらに分析機器の使用料については別の財源で補填することができたため,支出を行わなかった.
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度予算において出費予定額の大部分を占めていた観察材料の購入費については年内の納入が間に合わなかったがすでに発注済みであり,来年度に速やかに納入される.予定である. また,本年度,効率的に研究を進めた結果,生じた分の予算については,今年度購入する消耗品を増資することで使用する予定である.
|