本研究「医療専門職者における専門職連携能力の熟達と経験学習に関する研究」は、医療現場での専門職連携能力開発に向けた環境形成やマネジメント、研修内容・評価、専門職連携教育の改善に貢献する知見を獲得を目指し、医療専門職者が、専門職連携能力をどのように業務での経験によって学習し、熟達させていくのかについて研究を行うことを目指した。 最終年度では,救急救命士の専門職連携による能力の熟達と経験学習についての論文を改めてまとめ出版した(「救急救命士の経験学習プロセス:医療専門職間の連携に注目して」松尾睦編著『医療プロフェッショナルの経験学習』、同文舘出版)。本論文では、現在医療現場で働く救急救命士は、キャリア10年目までは同職種での連携を中心に、11年目以降は他職種との連携から能力獲得が促されていることを明らかにし、キャリアの進展に応じて、連携をリソースとして能力が獲得される仕事現場は、組織内同職種→組織間同職種→組織内多職種→組織間多職種と拡大していく傾向があることを示すことができた。 また、経験学習の知見を活用した、看護職養成課程での体験学習の具体的な実施方法について、編著者として看護教員と連携協働し、書籍をまとめ今夏出版予定となっている(看護教育実践シリーズ5『体験学習の展開』、医学書院)。本書は学生の体験学習をいかに計画・実施し、支援することでより効果的に行えるかということを体系的に網羅した書物であり、看護職にとどまらず今後の医療専門職の経験学習に貢献するものであると考えている。
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