研究課題/領域番号 |
15K21259
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
木下 英樹 宮城大学, 食産業学部, 助教 (50533288)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / プロバイオティクス / 多機能性タンパク質 / ムーンライティングタンパク質 / グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素 / GAPDH / 重金属 / 抗生物質 |
研究実績の概要 |
近年、1つのタンパク質が複数の機能を持つ多機能性タンパク質(ムーンライティングタンパク質)の存在が明らかになってきた。乳酸菌の菌体表層に高頻度に発現しているグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)は、その代表的な例であり、菌体内では解糖系の酵素として働いているが、菌体表層では腸管付着因子や溶血関連因子して働いていることが明らかになっている。また、免疫応答やストレス応答に関与している可能性も示唆されているが、表層GAPDHの多機能性は十分に明らかになっていない。そこで本研究では、乳酸菌の菌体表層ムーンライティングタンパク質の多機能性を明らかにすることで、乳酸菌の多機能性獲得戦略の一端を明らかにすると共に、有用乳酸菌を選抜する上での機能性マーカーとしての利用を検討することを目的とした。 本年度は、GAPDHの多機能性解析を有害物質の吸着能(重金属およびヒスタミン)、および細胞保護(重金属および抗生物質)の観点で解析した。まずは表層GAPDHを多く発現している菌体を選抜した。次いで、重金属吸着試験を行ったところ、GAPDHは水銀やカドミウムの吸着に関わっていることが示唆された。GAPDHはメタロチオネインの金属結合モチーフであるCXXCモチーフ(Xは任意のアミノ酸)を有していることからCXXCモチーフ等に吸着している可能性が示唆された。一方、ヒスタミンの吸着は逆の傾向となり、GAPDHとヒスタミンは同じ負電荷物質を認識している可能性が示唆された。重金属耐性についてはGAPDHが表層にある方が耐性が低くなる傾向が見られた。これは重金属は一度GAPDHに結合した後、菌体内に取り込まれ毒性を発揮している可能性が考えられた。一方、テトラサイクリンとシプロフロキサシン耐性は逆の傾向を示し、GAPDHが抗生物質からの細胞保護に一役買っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
それほど大きな遅れではないものの、組換えGAPDHの作製に思いのほか時間がかかったことが遅延の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
GAPDHの他の機能性を解析するとともにGAPDH以外の有用なムーンライティングタンパク質について網羅的に解析し、有用な機能性マーカーを見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
組換え体作製に時間がかかったために他の機能性解析に使用する予算が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、積み残したGAPDHの多機能性解析に加え、計画通り他のムーンライティングタンパク質の網羅的な解析を行う予定である。 機能性解析は、ビフィズス菌増殖促進作用、抗酸化作用、免疫賦活化作用などを予定している。ムーンライティングタンパク質の網羅的な解析は、菌体のPBS抽出画分(多くのムーンライティングタンパク質はイオン結合により菌体表層に留まっている)をSDS-PAGEあるいは二次元電気泳動に供し、タンパク質を網羅的に解析していく。複数の菌株に共通し、発現量が多いものから順に行なう。
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