本研究は「受動飲酒」が実際に起こりうるかを確かめ、「受動飲酒」の有害性を検討するコホート研究の足掛かりとすることを目指している。 平成30年度に新生児の毛髪中にFAEEが存在することを示した。令和1年度では、我々が確立した方法で母親毛髪中のFAEE濃度の測定を実施した。その結果、FAEE分画のうち、Ethyl Myristate、Ethyl Palmitate、Ethyl Stearateの濃度はすべての検体で分析可能であった。しかしながら、Ethyl Oleateは1検体が検出限界(0.005 ng/mg)以下であった。Ethyl Myristate、Ethyl Palmitate、Ethyl Stearate及びEthyl Oleate、各々の平均濃度は、0.024 ng/mg、0.072 ng/mg、0.017 ng/mg及び0.108 ng/mgであった。さらに、検出限界以下のあったEthyl Oleateを除いたEthyl Myristate、Ethyl Palmitate、Ethyl Stearateの合計(総FAEE)の平均濃度は0.113 ng/mgであった。母親毛髪中の各FAEE及び総FAEEと同居者の飲酒量の相関関係を確認したところ、Ethyl Myristate、Ethyl Palmitate及び総FAEEにおいて有意な相関関係が認められた(Ethyl Myristate: R2= 0.973; p= 0.02、Ethyl Palmitate: R2= 0.992; p< 0.01、総FAEE: R2= 0.995; p< 0.01)。一方で、Ethyl Stearateは有意な相関関係は認めなかった(R2= 0.588; p= 0.41)。本結果において、総FAEEにて強い相関関係が示されたことから「受動飲酒」の存在の可能性を示唆することができた。
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