銀行間決済システムと信用創造システムを明示的に導入したマクロ経済モデルについての研究を継続して行った.その結果,以下の理論的結論を得た.1点目は,中央銀行当座預金金利の水準によって均衡の性質が変わる点である.より具体的には,中央銀行当座預金の金利が高いときには民間銀行は現金を保有しないが,中央銀行当座預金の金利が低くなると,民間銀行は中央銀行当座預金と現金をともに保有する点である.2点目は,民間銀行が現金を保有しない均衡では,中央銀行当座預金金利の低下が貸出金利や生産に与える効果は家計の労働不効用や企業の生産によって正負ともにあり得ることである.3点目は,民間銀行が現金を保有しない均衡では,ハイパワードマネー成長率の増加はインフレ率と貸出金利を引き上げ,生産を縮小させることである.今後は,中央銀行当座預金金利が十分低く,民間銀行が現金を保有する均衡における中央銀行当座預金金利政策とハイパワードマネー成長政策の効果を分析する計画である.本研究の成果は論文「The Effects of High-Powered Money Growth and Reserve Rate Policy in the Model with Money Creation and Interbank Settlement」にまとめ,学術雑誌に投稿する.草稿はSSRN Working Paper Seriesに公開されている.
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