研究課題/領域番号 |
15K21272
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
杉山 佳奈子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 客員研究員 (20623226)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エボラウイルス蛋白質 / ウイルスタンパクの発現 |
研究実績の概要 |
エボラウイルスにおけるRNA polymerase及びその相互作用蛋白質の構造機能相関を明らかにするため、RNA polymeraseとウイル蛋白質の単体及び複合体構造の解析を目指し研究を行っている。まずはじめに、本研究のメインターゲットであるRNA polymeraseの発現を試みた。 エボラウイルスのRNA polymeraseは2200アミノ酸を超える巨大蛋白質であり、全長での発現は大腸菌、昆虫細胞系において、失敗に終わった。そこで、二次構造予測を元に、いくつかの断片に分けて発現を試みた。その結果、1-450残基、551-904残基、1187-1165残基の部位において、大腸菌発現系において可溶性蛋白質の存在を少量ではあるが確認できた。可溶化が確認できた条件において、結晶化に向けた可溶性蛋白質を得ようと大量培養を行ったが、大量培養の条件ではすべて不溶性なってしまうか、多少可溶化しても精製の段階ですぐに分解してしまい、安定な蛋白質を得ることができなかった。また、可溶性が確認できた少量での発現系においても精製の段階で可溶性蛋白質が分解若しくは沈殿することがわかった。 RNA polymeraseのウイルス蛋白質との相互作用は不明なことが多いが、ウイルス及び宿主の体内において、RNA polymeraseのN末端側がVP35と相互作用しているという報告はすでになされていた。そこで、可溶化の可能性が高い1-450残基とVP35の共発現を試みるため、まずはVP35の発現系の構築を行った。その結果、VP35のN末端ドメイン、C末端ドメインに分割することで安定かつ大量のGST融合蛋白質を得ることができた。得られたGST融合VP35とRNA polymerase1-450の共発現系を構築し、発現精製を行ったが、安定な複合体を得ることはできなかった。 以上の結果から、まずはVP35存在下及び非存在下において安定なRNA polymeraseを得ることが第一だと考え、現在は昆虫細胞系を用いた単体及び共発現系の構築と発現条件の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度までの研究において、少量培養におけるRNA polymerase断片の可溶化が確認できており、平成27年度にその精製と複合体の構築を終わらせる予定であった。しかし、実際に研究を進めていったところ、得られた可溶性蛋白質が非常に不安定であり、条件検討をしても可溶性蛋白質に対する不溶性の蛋白質の割合は変わらず、大腸菌発現系での発現がこんなんであるとの結論に達した。当初の予定では、すでに発現条件が曖昧ながらも決まっており、平成27度はより安定な条件の検討と、精製条件確立を行う予定であったが、新たに共発現系の構築及び異なる発現系の構築を行うことになったため、当初の予定より遅れ、安定な蛋白質の精製条件の確立をするには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、まずRNA polymerase断片の安定かつ大量発現を目指し、発現系の条件検討を行っていく予定である。これまでの研究過程において、ウイルス蛋白質であるVP24,VP30,VP35,VP40とNPに関しては、ほぼすべての範囲を網羅する断片の安定な発現と精製条件を確立し、常時蛋白質が得られる状況になっている。そこで、様々な共発現系を構築することによって、RNA polymerase断片の安定な発現及び精製、結晶化を行うことができるのではないかと考えている。 具体的には昆虫細胞発現系において、複数及び巨大な複合体の発現に適したFlexiBac発現系を用いるべく、現在発現系の構築を行っている。 RNA polymerase断片が不安定だった理由として、断片化した事によって本来であれば蛋白質の内側に位置するアミノ酸が表面に出ている可能性と、ウイルス及び細胞内において相互作用している蛋白質による安定性の維持の2つの可能性が考えられることから、これらの可能性を考慮した複合体の発現系を行うことで、安定な蛋白質を得ること、結晶化、構造解析を行うことができると考えており、平成28年度において、これらの目標を達成していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では平成27年度に蛋白質の大量培養及び精製を行う予定であった。蛋白質の精製に用いる樹脂及び消耗品に対して、費用を計上していたが、実際には主に発現系の構築及び条件検討を行うことが主であった。そのため、平成27年度の使用予算としては発現系に関わる消耗品等に限り、精製に関する費用に関しては次年度に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画の進捗としては多少の遅れが出ているが、計画の流れとしては外れていないため、繰り越した予算は当初の予定通りの用途で平成28年度に使用していく計画である。 具体的には精製用樹脂や消耗品と結晶化試薬、X線照射実験に用いる機器等である。蛋白質のX線結晶構造解析において、結晶化試薬及び結晶化に用いる消耗品が、最も予算を必要とする過程であり、繰り越した予算は平成28年度に計上されていた予算とあわせて、これらに使用していく予定である。
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