研究課題
本研究では、指定薬物の使用鑑定に必要である様々な指定薬物由来の代謝物標準品を提供するために、効率的な指定薬物代謝物生合成システムを構築することを目的とする。申請者らは既に代表的な薬物代謝酵素である19分子種のシトクロムP450 (CYP)、35分子種のUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT)、および10分子種の硫酸転移酵素 (SULT) 等の酵母発現系を有している。しかし指定薬物の代謝にはモノアミンオキシダーゼ (MAO) やフラビン含有モノオキシゲナーゼ (FMO) 等が重要な役割を果たす場合がある。そこで前年度は、幅広い指定薬物の代謝物生合成に対応するために、2分子種のMAOおよび3分子種の FMO発現系を構築した。当該年度は、既存の薬物代謝酵素 (CYP、UGT、SULTおよびCOMT) 発現酵母と新規構築した発現酵母 (MAOおよびFMO) を用いて、指定薬物の代謝物調製可否を検討した。指定薬物およびその類似化合物は、輸入規制により市販品購入が著しく困難であったため、研究協力者からの譲渡により入手したMDMAおよびMDAをターゲット化合物として代謝活性評価を行った。両化合物はCYP、UGTおよびCOMTにより多段階に代謝を受けるため、初段階のCYP代謝反応が代謝物調製可否に大きく影響するが、基質化合物による酵素阻害、代謝物の不安定性および使用分析装置の検出感度が原因でCYP発現酵母もしくは肝臓ミクロソームを用いた代謝物の検出は困難であった。今後は分析が容易な化合物を再度選定し、代謝物調製を試みるとともに、指定薬物に構造が類似する内在性神経伝達物質を用いた代謝様式を解明することにより指定薬物代謝経路を推測する。
3: やや遅れている
輸入規制により指定薬物および類似品の購入が著しく困難であったため、譲渡により入手したMDMAおよびMDAをターゲット化合物として代謝活性評価を行ったが、両化合物は申請者らが使用可能な分析系(HPLC-UV)における検出感度が極めて低く、また中間代謝物の安定性が極めて低いことから代謝活性を評価することが困難であった。ターゲット化合物の変更を試みたが、希望市販品の購入が困難であることから指定薬物の代謝スクリーニングは遅れている。
海外メーカーの指定薬物市販品購入が著しく困難であり、MDMAおよびMDAは分析や代謝物安定性に課題があることから、国内調達可能で分析可能な指定薬物およびその類似品を再度選定する。また、他研究者からの譲渡による化合物バリエーションを増やすことで代謝物生合成を試みる。並行して、内在性神経物質をターゲットとして各酵母発現系の代謝活性を評価することで類似構造の指定化合物代謝経路を推測する。
購入予定であった指定薬物およびその類似化合物について、輸入規制により手配不可となり予算執行額が計画よりも減少したため。
引き続き物品費として代替化合物の購入に使用する。
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Molecular Pharmaceutics
巻: 13(7) ページ: 2274-2282
10.1021/acs.molpharmaceut.5b00954. Epub 2016 Jun 8.