研究課題
鉄や亜鉛栄養価が高いコシヒカリを作出し、日本人が日々摂取する米食から鉄や亜鉛をより多く摂取できれば、日本人の鉄欠乏性貧血症や亜鉛欠乏症の改善に貢献できる。また、これによりコメの商品価値を高めれば、農家にとっても利益となる。そこで、重イオンビームにより変異を導入したコシヒカリの変異系統を種子中の微量元素の含有量と収量、表現型を元に選抜し、鉄や亜鉛含有量が高く、他の形質が通常のコシヒカリと同等の新しいコシヒカリ品種を作出することを目的としている。昨年度選抜した15 系統 M5 世代の植物を各 60 個体ずつ石川県立大学の圃場水田で栽培した。定期的に写真撮影を行い、各系統の表現系を観察した。また、出穂日、草丈などの表現型を調査した。イネを収穫後、収量と捻率を記録した。24 個体ずつ、M6 種子の玄米中と白米中の鉄・亜鉛やその他の微量元素の含有量を測定した。選抜系統の玄米の鉄含有量は野生株と比較して最大で1.4 倍に、玄米の亜鉛含有量は野生株と比較して最大で 1.7 倍に増加していた。しかしながら、本世代においてもまだ目的形質が安定していなかった。同じ親由来の M5植物体でも個体ごとに、種子 (M6) の鉄・亜鉛含有量の値が異なり、鉄や亜鉛含有量が高いという目的形質を示すものと、目的形質を示さないものとが混在している状態だった。前世代の分析結果と比較すると、よりは親世代の性質を受け継いでいる個体数が多かったものの、M5 植物体の段階でも、まだ染色体レベルではヘテロの個体が混ざっているようであった。原因遺伝子の推定やマウスへの給餌試験を行うには、もう少し世代を進め系統を固定する必要がある。
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PLoS ONE
巻: 12(3) ページ: e0173441
10.1371/journal.pone.0173441