研究課題/領域番号 |
15K21279
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
砂川 陽一 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30466297)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 転写因子 / 心肥大 / GATA4 / p300 / 二量体 |
研究実績の概要 |
心不全の発症・進展には心臓特異的転写因GATA4が重要な役割を担っている。本年度では心筋細胞肥大に対しGATA4の二量体形成がどのように関与しているか検討した。 HEK293T細胞にFLAGタグを付与したGATA4を発現させ、グルタルアルデヒドによる架橋反応を行ったところ、GATA4の二量体化はp300を共発現させると増強した。HEK293T細胞でのIP-WBでは、p300とGATA4を共発現させるとGATA4のアセチル化とともに二量体形成が増加していた。GATA4アセチル化部位欠失変異体やp300HAT活性欠失変異体の場合、GATA4のアセチル化も起こらず、二量体化形成の増加も見られなかった。同定した二量体形成部位を3つタンデムに繋げた変異体(3xG4D)を発現させるプラスミドを作成し、HEK293T細胞に過剰発現させたところ、GATA4のアセチル化量は変化させずに二量体形成及び心肥大反応遺伝子であるANF、ET-1のプロモーター活性を抑制していた。最後に初代培養心筋細胞に3xG4Dをレンチウイルスを用いて過剰発現させたところ、フェニレフリンによって誘導される心筋細胞肥大反応が有意に抑制された。 GATA4の二量体化部位に必須のドメインである308-326部位とDNA結合能に必須であるZinc Finger部位の立体構造解析を行うため、これらの部位を含むGATA4断片を大腸菌にて作成し、各種クロマトグラフィにより精製を行った。これをGATA配列を含むDNAと混合し、結晶化スクリーニング、結晶化条件の最適化を行い、X線回折実験に適した結晶を得ることに成功した。得られた結晶を用いて、Photon Factory BL17AにてX線回折実験を行い、タンパク結晶特有の回折像を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GATA4の二量体化部位とZinc Finger部位のタンパク結晶化のスクリーニングを行い、タンパク結晶特有の回折像を得たが、最終的に立体構造を決定するまでには至らなかった。そのため、結晶化されるたんぱく質の長さや混合するDNA配列を変更し、網羅的に結晶化条件と再検討することで、二量体化部位とZinc Finger部位の立体構造の特定まで持っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果により、GATA4の二量体化形成が転写コアクチベーターであるp300のHAT活性により制御を受けていること、3xG4DによりGATA4の二量体化形成を特異的に阻害すると心筋細胞肥大反応が抑制されることを見出した。このことから、GATA4の二量体化形成が心不全治療の新たな標的となる可能性が示唆された。そこで、GATA4の二量体化形成を指標としたハイスループットの検出方法の確立を試みている。この手法が確立できたならば、GATA4の二量体化を阻害する化合物のスクリーニングを行うことが可能となる。また、この検出方法をマウスに導入することで、肥大や不全心でのGATA4二量体化形成の変化について詳しく検討していく予定である。
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