中世やまと絵屏風の多くには金・銀・雲母による加飾が見られる。なかでも金銀箔の小片を撒きつぶしたものを、室町時代古文書に現れる「金磨き付け屏風」とする見解が定着しつつあり、現代ではあまり知られない「金磨き付け」による表現を技法の観点から捉え直そうと試みた。様々な試作の結果、金が光沢感を持ち輝きが増すのは、下地が平滑であることと、金箔に多少の厚みがあることが重要と分かった。下塗りの雲母は粒子が粗いため、予め雲母地を磨いて平滑にしておき金箔を撒くか、撒いた金箔と一緒に磨きこむことで金に光沢感が出た。「金磨き付け」技法は金箔の撒き方や厚みに留まらず、雲母地の作用も含めて捉えるものではないかと考える。
|