研究課題/領域番号 |
15K21281
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
小鷹 研理 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (40460050)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 身体イメージ / body ownership illusion / virtual reality |
研究実績の概要 |
本課題の目的に沿って、身体イメージの位置を徐々に変異させるための複数の手法を検討した。
(A)人差指が伸縮する感覚を誘発する装置を考案した。これは、1)左右の人差し指の先端に同期的な振動刺激を与えたうえで(触覚-触覚間同期:自己接触錯覚)、2)左右の手をそれぞれ別の可動台に固定して、人差し指間の距離を変えるとともに、その動きに合わせ、一方の人差し指のみが伸縮するCG映像を呈示することで(固有感覚 - 視覚間同期)、一方の指が選択的に伸縮しているような感覚を誘発するものである。複数の被験者実験を行い、「伸縮感覚」を誘発するうえでの各モダリティーの有意な効果を確認するとともに、振動同期によって有意に高まる「自己接触錯覚」の効果が、一定レベルの「伸縮感覚」を誘発するうえでの必要条件となることを示唆するデータを得た。(B)腕が伸縮する感覚を誘発する装置を考案し、国内会議等で発表を行った。具体的には、鉄棒にぶらさがる状況下で、自重の変化割合をHMDで表示されるアバターの腕の長さとリンクさせることで、HMDを装着した体験者が、鉄棒に深くぶらさがればぶらさがるほど、自身の腕が伸びているるような感覚を与えるものである。(C)Moving Rubber Hand Illusionの実験系を導入し、影による身体イメージの変調の効果を被験者実験によって検証した。影のソースとなる身体部位が運動状態にあるときに、より強い位置感覚の変異が生じることを明らかにした。(D)LeapmotionとOculusを組み合わせることで、HMDにかざした両手の動きに応じて、一人称視点と幽体離脱(三人称視点)を切り替えることができるインタラクティブコンテンツ「I am a volleyball tossed by my hands」を制作し、国内会議等で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の当初の目的は、モーフィングによって、(モーフィングの到達点に位置するところの)通常とは異なる非相似的な身体イメージに対する同一化を促進することにあった。一方で、課題をすすめていくなかで、モーフィングの手法を適当に設計することによって、身体イメージが連続的に変異していく過程で「伸縮感覚」が誘発され得ることが見出された。我々は、この点について、「伸縮感覚」を適切に獲得することこそが、本課題の直接の目的である、非相似的な身体イメージの獲得にも直接的に寄与すると考えている。このような考え方に基づき、今後の中心的な課題を、種々の身体部位において「伸縮感覚」を効果的に誘発するための環境設計に置くものとする。初年度は、指と腕の二つの異なる身体部位の「伸縮感覚」を誘発する環境を構築することに成功した。今後、伸縮感覚を定量化するための実験系の検討・あるいは伸縮感覚を体感するためのコンテンツの制作など、多角的な展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(A)(C)については、すでに進めている被験者実験の結果を解析し、海外のジャーナルへと投稿する予定である。このなかで、(A)については、左右の人差し指の長さの伸縮感覚をアンケートだけではなく、移動量(proprioceptive drift)として計測したものを解析する。また、(C)については、手の位置感覚の移動量を計測する際に、影を見続けている状態と目を閉じた状態の違いに着目して解析を行う。
(B)については、より簡易なセンサ空間を構築し、CG空間を刷新することで、腕が伸びるという状況により強く適合するような新しいコンテンツを制作する予定である。また、腕が伸びるという感覚を(アンケート以外で)指標化する手法についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
指が伸縮する感覚を誘発する研究・影による身体所有感変調の研究において、複数回実施した被験者実験の結果に不備があり論文の執筆が滞っているため、予定通りに、国際ジャーナルへの投稿がすすんでいない。
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次年度使用額の使用計画 |
国際ジャーナル投稿のための各種費用(英文校閲・掲載費)として計上する。
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