研究課題
頭頸部がん患者の約6割は進行期で発見され予後不良であり、確立された予後因子は原発部位・臨床病期・併存症が、その他の因子は不明確である。発症には喫煙・飲酒・Human papilloma virus (HPV)などの環境因子が強く影響しているが、HPV以外の喫煙・飲酒・食習慣などの環境因子の予後への影響は検討の余地がある。また遺伝子多型の環境因子との交絡関係も明らかにする必要がある。本研究では当初の研究計画に沿って、頭頸部がん患者における飲酒習慣とアセトアルデヒド脱水素酵素2 (ALDH2)遺伝子多型の予後への影響を検討した。愛知県がんセンター疫学・予防部で行っている病院疫学研究データベースより抽出した頭頸部扁平上皮がん患者の中で、採血に同意が得られ、飲酒情報のある267人を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。飲酒状況は非飲酒群、軽飲酒群 (エタノール46g未満、週5日未満)、中飲酒群 (エタノール46g以上・69g未満、週5日以上)、重飲酒群 (エタノール69g以上、週5日以上)の4群に層別し、ALDH2 Glu504Lys遺伝子多型 (rs671)はTaqman法を用いて検討した。飲酒状況とALDH2遺伝子多型それぞれでは有意な予後への影響を示さなかった。層別化解析を行い無病生存においてALDH2 Glu/Glu群では重飲酒群が有意に予後不良であり、飲酒が正の量反応関係を示した (重飲酒群vs非飲酒群;ハザード比:3.18, Ptrend; 0.028)。この結果に関する考察としては、飲酒依存に関してALDH2 Glu/Glu群がGlu/Lys群より関連が強いとする報告があり治療後の飲酒状況の影響などが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画通り、ALDH2遺伝子多型を考慮した飲酒状況の頭頸部がん予後への影響について明らかにすることができた。より詳細な検討を行うために対象コホートの拡大などの可能性について検討を行っている。
研究計画にそってDNA修復酵素遺伝子多型など他の遺伝子多型についても検討を進めるとともに、国際頭頸部がん疫学コンソーシアムの膨大なデータを用いた新たな発症・予後因子の同定 (特に食習慣について)をすすめ、頭頸部がん個別化予防・治療の構築へ向けて研究を進めていく予定である。
当初の研究計画よりも遺伝子多型解析に関連する物品費などの費用負担の縮小があり、また旅費に関しても国内学会発表が中心であったことが影響していると考える。
今年度の使用計画に関しては、国際頭頸部がん疫学コンソーシアムの集積データを用いた疫学研究を計画しており、それに伴う費用負担が生じることが予想される。また論文投稿費用負担の増額も考えられるためそれらに用いる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
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巻: In press ページ: In press
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