「城中村」研究(2015-)では、北京市を対象にして、土地所有の二元構造(国家所有/集団所有)や1900年代の激動的な歴史の中で、土地所有の権利関係の複雑化が生じ、インフォーマルなエリアが発生したことを明らかにした。「城中村」はスプロールする都市開発の中で開発されないまま未収容に残された村を意味する。そこでは、低賃貸による住宅提供が進み、数段階に渡る農村部からの人口流入の大きな受け皿となっていたことを明らかにした。 一方で、北京旧城内に残る伝統住居形式「四合院」は、数十世帯が住み着く「大雑院」化した状況に陥っていおり、同様の現象が広範囲で確認できる。さらに、こうしたエリアは北京市の中心部であることから「歴史文化保護区・歴史風貌協調区」と居住環境の悪化したエリア「棚戸地区」として二重に指定されており、保存と開発の間で政府・ディベロッパー・住民の3者間で様々な軋轢によって、スラム化から都市空洞化へと変化が生じていたことを明らかにした。 同様の現象は、アジアの歴史都市でも起きており、大きくはグローバルな視点から大都市における歴史環境保全のあり方を問い直し、新しい持続可能な都市整備・伝統建築の改修手法を提示する必要がある。
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