展開構造は少ない労力と短時間の作業で空間を構成することができるため,大災害直後の緊急避難シェルターや地元住民が仮設的に集まるような空間を素人施工的に作るのに有用である。この利点を生かすため,展開構造は,①軽量かつコンパクトに収納できること,②展開後の容積がなるべく大きいこと,③展開過程が非可逆的で,展開と同時に構造安定性が得られること,④風雨や強い日差しを遮るための膜等の面材が取付けられていることが理想的であると考えられる。 本年度は、展開が単純で,かつ膜を外皮として有するドーム状の展開システム提案し,小型模型の載荷実験を通じ,実現性を確認した。具体的には,平面アーチの両端部が扇状に開くように接合されており,それらアーチ間に膜が取り付けられている。 展開の過程は,(1)折り畳まれた骨組みを開き,(2)骨組みの中心付近を吊上げ,両端を所定の位置に固定し,アーチ状に仮支えする。(3)自重を利用し,吊り点から左右対称に扇を開くように展開する。(4)接地部をアンカーや錘等で固定する。膜を目標形状に対し緯線方向に小さく作っておくことで,展開と同時に初期張力が導入される仕組みである。 小型模型の載荷実験を通じ,本システムの実現可能性を確認した。また,骨組みをヒンジアーチとした場合においても,初期張力により安定した構造を得られることが確認できた。ただし,部分的な座屈により耐力が急激に低下するため,骨組みのヒンジ接合部は補強を行い,半剛接とする等の工夫が必要と考えられる。
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