研究課題/領域番号 |
15K21288
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
大谷 恒史 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 後期臨床研究医 (30597555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロスタグランジントランスポーター / 潰瘍性大腸炎 / 炎症発癌 |
研究実績の概要 |
8週齢のC57BL/6Jマウスを用いてazoxymethane (12 mg/kg) を腹腔内投与し、14日目から21日目と35日目から42日目に3% dextran sulfate sodiumを自由飲水させて大腸炎症発癌モデルを作成した。炎症部位および発癌部位におけるprostaglandin (PG) E2誘導酵素であるcyclooxygenase (COX)-2、PGE2代謝酵素である15-hydroxyprostaglamdin dehydrogenase (15-PGDH)、細胞内への膜輸送担体であるPG transporter (PGT)、外向輸送を司るmultidrug resistance associated protein (MRP) 4の発現動態について、real-time RT-PCR法を用いて検討した。21日目に解剖し炎症部位について検討した結果、COX-2の発現亢進と15-PGDHの発現低下が見られた。また56日目に解剖し発癌部位について検討した結果、COX-2、MRP4の発現亢進および15-PGDH、PGTの発現低下が見られた。さらにwestern blot法と免疫組織化学染色法を用いて検討した結果、大腸癌部位においてPGTの発現は低下していた。enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) 法を用いて大腸癌部位におけるPGE2含有量を測定した結果、細胞内のPGE2含有量は増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発癌までに8週間かかるので、vivoの実験にやや時間を要する。また当院において潰瘍性大腸炎から発癌をきたした臨床症例数が少なく、臨床データを用いた解析が難しい。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト樹立大腸癌細胞株であるHT-29、SW480、Caco-2を使用し、各細胞のPGTタンパクをコードするSLCO2A1 mRNAの発現程度をRT-PCRによって調べ、SLCO2A1遺伝子を強発現あるいはノックダウンして、15-PGDHの発現が変化するかを調べる。また大腸癌細胞をPG産生阻害剤であるインドメタシンで前処置し培養液にPGE2を添加すると、PGE2はPGTにより取り込まれて15-PGDHで代謝され、代謝産物である15-keto-PGE2が培養液で検出される。そこでprobenecidを添加し、培養上清中の15-keto-PGE2をELISA法にて測定することにより、PGTと15-PGDHの間に機能連関が存在するかを調べる。さらにTNF-α (10 ng/ml) を培養上清に添加し、大腸癌細胞内のSLCO2A1、PGE2含有量、下流のNFκB経路の標的分子がTNF-αのサイトカインシグナルに伴ってどのように変化するか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はvivoの実験までしか進まなかったため、費用が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のvitroの実験におけるtransfection試薬などに使用する予定である。
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