研究課題/領域番号 |
15K21289
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
林 史和 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30723291)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 肝疾患 / サルコペニア / 栄養 / 身体活動 |
研究実績の概要 |
肝疾患のサルコペニアの診断には統一した基準がなく、用いた診断基準によりサルコペニアの有病率に違いがある事が問題であった。本研究では肝疾患のサルコペニア診断のために、Asian Working Group for Sarcopeniaが提唱するアジア人のためのサルコペニア診断基準を用いる予定であった。しかしながら、2016年に日本肝臓学会によって、日本人の肝疾患に起因するサルコペニアの診断を目的として日本肝臓学会基準が新しく策定された。そこで、日本肝臓学会基準、アジア基準、ヨーロッパ基準を用いて、日本の慢性肝疾患患者のサルコペニアの有病率を比較し、今後の研究に日本肝臓学会基準を用いることができるかどうかを検討した。また、日本肝臓学会基準で診断されたサルコペニア患者の食・生活習慣を解析し、今後の研究において適切な栄養・運動指導を行うための基礎資料を作成することとした。 結果として、ヨーロッパ基準は日本人の肝疾患のサルコペニア有病率を過大評価したものの、日本肝臓学会基準は、アジア基準とほとんど同じように骨格筋量、筋力の低下を判定することが可能であった。加えて、日常臨床的に用いられる腹部CTでサルコペニアの評価を簡便に行うことができることや、高齢者ではなくともサルコペニアの診断を行うことが可能であるなど、研究だけでなく、診療時におけるメリットも存在する。これらのことから、日本肝臓学会基準は、日本人の肝疾患に伴うサルコペニアの診断基準として有用であり、今後の日本人の肝疾患患者を対象としたサルコペニア研究においては、日本肝臓学会基準を使用すべきであると考えられた。また、サルコペニア患者は、アンケートを用いた食事調査や身体活動量調査の結果から、エネルギー摂取量や、身体活動量が低下している可能性が示唆された。今後は、これらの事実を考慮して、研究計画の修正と実行を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、肝疾患のサルコペニア診断のために、Asian Working Group for Sarcopeniaが提唱するアジア人のためのサルコペニア診断基準を用いる予定であった。しかしながら、2016年に日本肝臓学会によって、日本人の肝疾患に起因するサルコペニアの診断を目的として日本肝臓学会基準が新しく策定された。日本人の肝疾患患者のサルコペニア診断により適した基準であると考えられたため、予定を変更し、今後の研究に日本肝臓学会基準を用いることができるかどうかを検討した。 結果として、日本肝臓学会基準は、日本人の肝疾患に伴うサルコペニアの診断基準として有用であり、日本人の肝疾患患者を対象としたサルコペニア研究においては、日本肝臓学会基準を使用すべきであると考えられた。研究計画の予定を変更したことと、今後の研究には日本肝臓学会基準を使用するために、研究計画の修正を行っているため、研究には若干の遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
慢性肝疾患患者を対象に、日本肝臓学会基準を用いてサルコペニアの有無を判定する。測定のみを行うサルコペニアの無い患者をコントロール非介入群、サルコペニアのある患者をサルコペニア非介入群として割付する。さらに運動・栄養学的介入を行うことに同意を得られた患者に対して、サルコペニアの無い患者をコントロール介入群、サルコペニアのある患者をサルコペニア介入群として割付する。研究開始から機能性表示食品の投与と運動指導を12週後まで行い、結果を評価していく予定である。その際、加速度計GT3X(アクチグラフ社製)を用いて、習慣的な身体活動量の変化を評価する。また、介入中の食事量と生活習慣は、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)と、付属の生活習慣に関するアンケートにより把握し、適宜栄養指導を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の予定を変更し、研究計画の修正を行ったことで、予定していた介入研究に必要な消耗品等の購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
昨年度に引き続き、栄養素摂取量の評価のための解析費として使用する。また、介入研究に必要な食品や加速度計の購入費として使用する予定である。
|