• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

還元型ドデカボレート有機分子化反応を利用した新規BNCT用ホウ素薬剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K21291
研究機関大阪府立大学

研究代表者

服部 能英  大阪府立大学, 地域連携研究機構, 講師 (50514460)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードBNCT / ホウ素薬剤 / ホウ素アミノ酸 / ホウ素クラスター
研究実績の概要

がん-ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) 用ホウ素薬剤の分子設計において、マイナス2価の電荷を帯びたアニオン性のドデカボレート([B12H12]2-)は、低い毒性および高い水溶性など、ホウ素薬剤に求められる性質を備えていることから、ホウ素原子団として最適な化合物であると考えられている。申請者はこれまでの研究によって、マイナス1価の電荷を帯びた還元型のドデカボレートであるBNH3を含有するBNCT用ホウ素薬剤が、マイナス2価のドデカボレート含有化合物よりも高い効果を示す有望なBNCT用ホウ素薬剤であることを明らかにしてきた。
本研究は、種々の還元型ドデカボレートを、アミノ酸やペプチドに導入した新規なホウ素薬剤の開発を目的として展開するものであり、還元型ドデカボレートを導入するための素反応とそれを利用した新規ホウ素薬剤の合成および生物活性評価を行う。
本年度での研究では、昨年度までの研究を基に、ホウ素源として利用する還元型ドデカボレートとしてBSH([B12H11SH]2-)のチオール基に種々のアルキル基を導入したスルフィニウムドデカボレート(DA-BS)に着目し、これらを有機分子に導入した誘導体の合成とBNCT用ホウ素薬剤としての評価を行った。
その結果、DA-BSをアミノ酸やペプチドに導入したホウ素化合物が、臨床応用されているBSHなどのようなホウ素薬剤よりも高い腫瘍細胞集積性を有するということが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、1.DA-BSおよび1-トリメチルアンモニオ-12-メルカプトドデカボレート(TN-BSH)の有機分子化反応の開発 2.還元型ドデカボレート含有腫瘍指向性有機分子の合成  3.合成したホウ素薬剤の生物活性評価の3種の研究から成り立っている。本年度においては、昨年度に確立した1を基に、2,3の研究に関して集中して検討を行いそれぞれ一定の成果を得ることができた。
まず、還元型ドデカボレートを、各種アミノ酸の側鎖あるいはカルボン酸に導入したドデカボレートアミノ酸や、これを腫瘍指向性ペプチドに導入したドデカボレートペプチドを複数合成した。さらに、これらの化合物合成で得た知見と技術を基に、コウジ酸などのこれまでに合成してこなかったアミノ酸・ペプチド以外の腫瘍指向性有機分子にドデカボレートを導入した化合物の合成に成功し、合計100近くの化合物ライブラリーを構築することに成功した。
そして、合成した化合物について培養腫瘍細胞を用いた生理活性試験を行い、それらの中でも、BSH([B12H11SH]2-)のチオール基に種々のアルキル基を導入したスルフィニウムドデカボレート(DA-BS)に腫瘍指向性有機分子を導入した化合物群が、高い細胞膜透過性と腫瘍細胞集積性を示すことを明らかにした。特に、アミノ酸やコウジ酸にDA-BSを導入した化合物群は、臨床応用されているホウ素薬剤よりも非常に高い腫瘍細胞集積性を示す有望な化合物であることが明らかとなり、この研究成果について、共同研究企業と特許出願を行うに至った。
しかし、京都大学原子炉実験所の原子炉が、予定に反して休止中であるため、計画していた生物活性試験の全てを行うことができなかった。
以上の結果から、本年度の目的を完全に達成することこそできなかったが、想定していた以上の研究成果をあげることが出来たと考えている。

今後の研究の推進方策

昨年度につづいて、1.DA-BSおよびTN-BSHの有機分子化反応の開発 2.還元型ドデカボレート含有腫瘍指向性有機分子の合成  3.合成したホウ素薬剤の生物活性評価の3種の研究について平行して研究を進める。
まず、有機分子化反応としては、TN-BSHの有機分子化反応について検討を進める。そして、確立した有機分子化反応を用い新規ホウ素薬剤の合成とBNCT用薬剤としての評価を進めていく。これに関しては、本年再稼働予定の京都大学原子炉実験所が利用可能になるまでの間に、これまでに合成したホウ素化合物も含めて、より詳細な腫瘍細胞への輸送機構の解明を行っていくとともに、実験動物を用いた評価系での試験を進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、予定してた京都大学原子炉実験所における中性子照射試験が、京都大学原子炉実験所が稼働しなかったために、全く行うことができなかった。このため、京大炉での実験で予定していた研究にかかる物品などの費用を支出する必要がなくなり、これを平成29年度に繰り越して使用したいと考えた。

次年度使用額の使用計画

平成29年度こそは、京都大学原子炉実験所が再稼働する予定であるため、京都大学原子炉実験所への旅費と、京大炉において中性子を照射し、合成した化合物の評価試験にかかる費用に繰越金を使用させていただきたい。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Visualization of Boronic Acid Containing Pharmaceuticals in Live2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshihide Hattori, Miki Ishimura, Yoichiro Ohta, Hiroshi Takenaka, and Mitsunori Kirihata
    • 雑誌名

      ACS Sensors

      巻: 1 ページ: 1394-1397

    • DOI

      10.1021/acssensors.6b00522

    • 査読あり
  • [学会発表] 分子プローブを用いたホウ素薬剤の分布解析2016

    • 著者名/発表者名
      服部能英
    • 学会等名
      第10回光生体超分子化学セミナー
    • 発表場所
      近畿大学
    • 年月日
      2016-12-09 – 2016-12-09
    • 招待講演
  • [学会発表] DEVELOPMENT OF REDUCED THIODODECABORATE CONTAINING AMINO ACIDS AND PEPTIDES FOR BORON NEUTRON CAPTURE THERAPY2016

    • 著者名/発表者名
      服部能英、石村美紀、大田洋一郎、竹中宏志、上原幸樹、浅野智之、切畑光統
    • 学会等名
      第53回ペプチド討論会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府京都市)
    • 年月日
      2016-10-26 – 2016-10-28
  • [学会発表] ドデカボレートをホウ素源とする有機低分子型ホウ素キャリアーの開発2016

    • 著者名/発表者名
      服部能英、石村美紀、大田洋一郎、竹中宏志、上原幸樹、浅野智之、切畑光統
    • 学会等名
      第13回日本中性子捕捉療法学会学術大会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2016-08-06 – 2016-08-07
  • [産業財産権] ホウ素含有化合物2016

    • 発明者名
      服部能英、上原幸樹、切畑光統
    • 権利者名
      服部能英、上原幸樹、切畑光統
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2016-148978
    • 出願年月日
      2016-07-28

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi