がん-ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) 用ホウ素薬剤の分子設計において、マイナス2価の電荷を帯びたアニオン性のドデカボレート([B12H12]2-)は、低い毒性および高い水溶性など、ホウ素薬剤に求められる性質を備えていることから、ホウ素原子団として最適な化合物であると考えられている。申請者はこれまでの研究によって、マイナス1価の電荷を帯びた還元型のドデカボレートであるBNH3を含有するBNCT用ホウ素薬剤が、マイナス2価のドデカボレート含有化合物よりも高い効果を示す有望なBNCT用ホウ素薬剤であることを明らかにしてきた。 本研究は、種々の還元型ドデカボレートを、アミノ酸やペプチドに導入した新規なホウ素薬剤の開発を目的として展開するものであり、還元型ドデカボレートを導入するための素反応とそれを利用した新規ホウ素薬剤の合成および生物活性評価を行う。 本年度での研究では、昨年度までの研究を基に、ホウ素源として利用する還元型ドデカボレートとしてBSH([B12H11SH]2-)のチオール基に種々のアルキル基を導入したアルキルスルフィニウムドデカボレート(DA-BS)に着目し、これらを有機分子に導入した誘導体の合成とBNCT用ホウ素薬剤としての評価を行い、その腫瘍細胞への集積機構についても検討を行った。 その結果、DA-BSをアミノ酸、ペプチド、コウジ酸などに導入したホウ素化合物が、腫瘍認識部位として導入した有機分子の特性を利用して、腫瘍細胞に高集積することを明らかにした。
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