本研究題材のクリプトクロムは、近年、生物において地磁気認識をするセンサーたんぱく質である可能性が報告されている。今回、クリプトクロムが磁気センサーとして機能できるかを直接的に測定するために、大腸菌の大量発現系を用いて、ゼブラフィッシュ由来のCryptochrome-DASH「Zf_Cry-DASH」のタンパク質溶液を高濃度調整した。このZf_Cry-DASHは青色光照射によって、発色団のフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)が一過的にラジカル状態を形成することが分かっている。 また、このZf_Cry-DASHのラジカル状態の磁力が如何程のものか、そして磁気センサーとして機能可能であるか、を確認するための測定系として、磁気特性測定装置(MPMS3)による測定を試みた。その際、最大の問題は、測定装置内においてZf_Cry-DASHを光反応させるための方法であった。MPMS3のサンプルホルダーに石英ガラス管を連結し、極小青色発光ダイオードから照射光をZf_Cry-DASH水溶液へと誘導する系を構築することにより解決した。しかしながら、このMPMS3光照射測定系の構築にかなりの時間を要した。 2018年度に入って、Zf_Cry-DASHタンパク質溶液を用いて青色光照射を行い、光反応に伴って形成されるラジカル状態をMPMS3により測定することを試みた。結果としては現在のところ、まだ光反応をしたZf_Cry-DASHのものと思われる磁気特性を示すMPMS3シグナルの検出には至っておらず、さらなる測定条件の検討が必要であると考えている。
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