ミトコンドリア呼吸鎖複合体は各複合体が一定比率で集合した「超複合体」を形成する。超複合体形成が呼吸鎖末端酸化酵素(CcO)の活性中心の電子状態に与える影響を振動分光法により調べ、超複合体形成の意義を化学反応性の観点から明らかにする事を目的とした。単独で存在するCcOと超複合体形成時の共鳴ラマンスペクトルを比較し、活性中心の電子状態に違いがあるか調べた。還元型とCO型の超複合体のラマンスペクトルから、鉄-Hisと鉄-COの伸縮振動を検出した。CO型において極めて微小な振動数とスペクトルの違いが見出され、ここでの構造変化は、調節因子の結合時に見られる活性の上昇を伴う構造変化とは異なる事が示された。
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