研究実績の概要 |
偏光観測を用いた生命探査法の開発を目指し、具体的には以下の3つの研究を行った: (A) 海を持つ惑星の探査法開発、(B) 大気の光学的厚みの調査法開発、(C) 「大気透過光の偏光」を利用した惑星特徴づけ手法の開発。 まず、全体に共通する研究として、ある偏光分光特徴が系外惑星に対して検出可能であるかを評価する方法を開発した (Takahashi et al, 2017, A&A)。 次に、主として(C)に注力して研究を行った。2015年に初めて得られた月食の偏光分光データから、最大2-3%の偏光度を検出した (Takahashi et al., 2017, AJ)。さらに、2014年の観測結果を比較することで、 地球大気透過光の偏光度が雲の空間分布に依存している可能性を示した (Takahashi et al., 2019, PASJ)。 (A)については、観測を実現するための装置改良および性能評価を2018年度までに行い(高橋他, 2018, Stars & Galaxies; 高橋, 2019, Stars & Galaxies)、2019年度に月面地球照の近赤外偏光観測を行った。地球の反射面に占める海の割合が大きいほど、偏光度は高くなる傾向があることが分かった。つまり、近赤外の偏光観測が海を持つ系外惑星の探査に活用できる可能性を示した。 (B)については、(A)と同じ観測データから、地球の「最大偏光位相角」は可視光よりも近赤外のほうが大きいことが分かった。これは、「地球程度の光学的厚み(透明度)の大気を持つ惑星」に予想される結果であることから、多波長で最大偏光位相角を調べることが「地球程度の光学的厚みの大気」を持つ系外惑星の探査に有用である可能性が確認された。
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