研究課題/領域番号 |
15K21297
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
越智 郁乃 兵庫県立大学, 地域創造機構, 特任助教 (10624215)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 沖縄 / 軍用地 / 開発 / 祖先祭祀 |
研究実績の概要 |
本研究では、現代沖縄の重層的な権力構造の基で行われる軍用跡地開発をとりあげ、そこでの社会空間の再構築について、文化人類学的に探究する。具体的には、沖縄戦と軍用地接収により強制移住を経験した住民集団が、返還後の再開発において主体的に生活空間と宗教空間を再建する過程を明らかにしながら、軍用跡地における社会空間の再構築について考察し、ポスト基地社会の将来ビジョンについて再考する。 本年度は、沖縄県那覇市の対象地区における軍用地化の影響について、軍用地接収前後の土地利用の変化と当該地における旧住民コミュニティの再編に関する調査から明らかにするため、主に文献調査(学術文献と字誌、地誌や行政文書、比較として本土日本における軍用地に関する資料も含む)と、土地接収前の集落に暮らしていた人々やその子孫に対するインタビュー調査を行った。また、沖縄戦による疎開から戦後の軍用地化を経て復帰に至るまでの地区の変化と、強制移住を経験した旧住民の生活変化、共有地・祭祀の変化について調査を行った。 具体的には年次前半に、軍用地化までの集落住民の共同性を明らかにするために、琉球王国末期から沖縄戦までの対象地区における農地や共有地などの土地利用と、集落祭祀や死者儀礼の宗教実践について項目ごとに調査し、コモンズ研究や日本の入会地資源管理の研究を援用しながら考察した。また年次後半は、沖縄戦による疎開から戦後の軍用地化を経て復帰に至るまでの対象地区の変化と、強制移住を経験した旧住民の生活変化、共有地・祭祀の変化について調査し、政治経済的変化を踏まえてコミュニティ主体の返還跡地開発へといたる要因について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本務校における就業規則制限により、当初予定していた沖縄における長期調査及びインタビュー調査が十分に行えなかった分、沖縄や本土日本における軍用地に関する資料の収集に力を入れ、資料整理と比較検討を行った。また、上記した理由により、当初予定していた沖縄における調査対象地4ヶ所を2ヶ所に縮小せざるを得なかったが、その分対象地を絞って文献調査とインタビューを行い、その成果を日本民俗学会で発表するとともに、論文としてまとめた。以上から、本研究は今年度、おおむね順調に進展したと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、返還後の跡地開発を当該地住民の視点から捉え直すための研究を行う。 まず年次前半は、新都心で地域振興整備公団が行った再開発の中での旧住民の関与がどの程度あったか、区画整理や街づくりにおいて合意形成がどのように図られたかを、対象地区の旧住民コミュニティを対象にしたインタビュー調査から明らかにする。また、同時期に軍用地返還をうけ都市整備公団によって商業地開発が行われた東京都立川市の開発計画に関する資料を収集し、那覇市新都心での再開発と比較検討する。現地調査とリンクさせながら、商業的な軍用跡地利用開発の構想と実態、そこでの権力構造と旧住民の関与について考察する。年次後半は、祭祀空間の再編の過程について、かつて当該地での祭祀を担っていたコミュニティによる祭祀実践と宗教施設の再建過程、宗教実践以外の社会的活動から明らかにし、生活空間と宗教空間の再編による両者のダイナミズムを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況でも述べたとおり、今年度は長期の現地調査とインタビュー調査が十分に行えなかったため、文献資料の収集に伴う国内旅費に振り替えを行った結果、今年度の残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年収集した文献資料の整理、また、次年度における長期の現地調査・インタビュー調査と資料の収集・整理、考察、研究会開催費に用いるために、本年度残金を合わせて旅費・謝金、物品購入費にあてる予定である。
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