齋藤暢宏氏らとの共同研究の結果、静岡県伊東市の海中において、群れをなして遊泳中のハタンポ属(スズキ目:ハタンポ科)の幼魚(ツマグロハタンポPempheris japonica DöderleinとミナミハタンポP. schwenkii Bleekerの両方、あるいはどちらか一方)の体表にウオノギンカ属Anilocraのエガトイド幼体の寄生を記録した。採集したウオノギンカ属個体は標本にし、形態を詳細に記載した。寄生部位は主に宿主魚類の頭部背面であったが、体側尾鰭付近にウオノギンカ属小型個体がみられることもあった。ウオノギンカ属個体は比較的速く泳ぎ、被寄生魚を手網で捕獲した瞬間に宿主から離脱して遊泳行動をとった。ウオノギンカ属エガトイド幼体の形態形質による識別点としては以下に挙げるものが有効であった:1)頭部前縁に腹面に反り返る大きな吻を備える、2)頭部後縁は直線的、3)第1触角は第2触角より短く、第4~第8節は短い、4)腹部は胸部と連続的につながり、特に細くならない。既報の記載や本標本の調査では腹尾節や尾肢の長さに種差の可能性のある変異がみられたため、今後精査していくと共に、DNA解析を併用しながら種の特定を行う予定である。 齋藤暢宏氏との共同研究の結果、イワシノコバンNerocila phaiopleura Bleekerの幼体には、体サイズで分類できる複数のステージと考えられるものがあることを示した。また、エガトイド幼体から成体へ脱皮している途中(体前半分がエガトイド幼体で、体後半分が成体)の個体を見出した。
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