本研究は、中山間地域に居住する高齢者の援助要請の実態とその促進・阻害要因、援助要請の帰結を実証的に把握・解明することを目的としている。最終年度にあたる2018年度は、中山間地域の高齢者を対象に実施した質問紙調査のデータ分析およびその成果発表を行った。2018年度は主にソーシャル・キャピタルに着目し、ソーシャル・キャピタルと被援助志向性および援助要請意図、精神的健康の関連を検討した。その結果、ソーシャル・キャピタルが高いほど、高齢者の被援助志向性や援助要請意図が高く、精神的健康も良好であることが示された。ソーシャル・キャピタルの要素(構造型・認知型)別にみても同様の結果が得られた。ソーシャル・キャピタルが高い地域に居住する高齢者ほど、精神的健康が良好であるとの報告は多数なされているが、そのプロセスについてはいまだ検討の余地が残されている。本研究の結果は、ソーシャル・キャピタルが高齢者の被援助志向性や援助要請意図を介して精神的健康に影響を与える可能性を示唆するものであり、そのプロセスの一端を示すものと考えられる。今後の研究課題として、調査地域を拡大し、地域レベルのソーシャル・キャピタルでも同様の結果が得られるかを検討すること、また、介入研究デザインにより、ソーシャル・キャピタル醸成に向けた取り組みが高齢者の被援助志向性・援助要請意図の向上に結びつくかを検討することなどが挙げられる。引き続き、これら研究課題に取り組んでいく予定である。
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