中国では、改革・開放政策の始まった1980年代初頭から、国家レベルの重要課題として職業高校を中心に中等レベルでの職業教育の拡大に取り組んできた。しかし、2000年以降、職業高校への進学率は徐々に低下していき、職業教育政策は停滞に転じた。「一人っ子政策」による少子化も相俟って、多くの職業高校が募集定員を確保できず、また卒業生の就職難という出口の問題点も浮上するようになった。2000年以降、本格的に市場経済が導入され、経済のグローバル化の波が押し迫る中、職業高校の専攻やカリキュラムが実際の労働市場に対応しなくなってきたのである。 そこで、28年度は、21世紀を迎え新たな局面に展開される中国の職業教育政策について、政府の直接的なコントロールから開放された中等職業学校の市場が、どのような量的拡大を見せ、どのような質的な変容を遂げるのか、その展開メカニズムを明らかにすることを目的として、北京市、天津市において関連法規、資料、データの収集を行った。 その結果、第一に2000年以降、本格的に市場経済が導入され、経済のグローバル化の波が押し迫る中、職業高校の専攻やカリキュラムが労働市場に見合った形にシフトされていること、第二に今現在においても職業高校は進学にあたって積極的な選択の対象とはなっていないこと、第三に都市部の職業高校では当該地戸籍を持たない農村出身者を主な受け入れ対象としていること、が明らかになった。
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