本研究の目的は、「状況的危機」を診断概念として、実在型およびリスク型看護診断を開発することであった。当該年度における主な目的は、エキスパートナース(専門家)を対象としたコンセンサス研究として、国内の医療施設に勤務する救急・クリティカルケアおよびがん分野の看護師を対象に開発した看護診断の評価を行うことであった。しかし、研究の過程において、「状況的危機」を診断概念として捉えていたが、より広義において分析する必要が生じたため、より中立でニュートラルな意味である「危機」を診断概念とすることにした。そのため、研究計画および方法を再考し、「危機」に関連した看護診断の開発に向けた既存のNANDA-I看護診断についての現状分析を行った。結果として、危機介入を効果的に実施するためには「危機」に関連した新たな看護診断の開発の可能性が明らかとなった。 次に、改めて、「危機」に関する国内外の成書および文献の検討を行うとともに、看護における「危機」の概念構成を明らかにすることを目的として、Walker & Avant の方法に基づいて概念分析を行った。概念構築の背景、関連概念との相違、属性、モデル例の提示、先行要件と結果を明らかにし、その結果を基に、国内の医療施設に勤務する救急・クリティカルケア分野の看護師を対象に開発した診断の構成要素(診断名、定義、診断指標または危険因子、関連因子)についてのコンセンサスを得るための調査用紙の作成を行った。
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