本研究では非環式レチノイド“ゲラニルゲラノイン酸(GGA)”によって誘導される細胞死誘導のメカニズムには、オートファジーの不完全な応答が関与していると考えており、GGAの作用により、オートファジーの最終段階であるオートリソソームの形成を阻害することを見出した。そこで、オートファジーにおいて最終的な分解過程を担うリソソームの機能に注目し研究を行った。 本研究ではGreen Fluorescence Protein(GFP)は酸性環境(オートリソソーム形成時)で蛍光が消失するが、Red Fluorescence Protein(RFP)は消失しない性質を利用し、mRFP-GFP-LC3を発現するヒト肝癌由来細胞株HuH-7細胞にGGAを添加し、オートファジーフラックスを評価した。オートファゴソーム形成時、蛍光顕微鏡にて観察すると、LC3は黄色い顆粒状の蛍光として観察され、オートリソソーム形成時、LC3は赤い顆粒状の蛍光として観察される。一方、リソソームの機能を検証するためCathepsin Bたんぱく質(CTSB)の酵素活性を測定した。脂肪細胞での報告では、CTSBの酵素活性の増加は、リソソーム膜の不安定性“lysosomal destabilization”を引き起こし、細胞死誘導の引き金になることが報告されている。 GGA添加の後には黄色い蛍光の顆粒状LC3が観察され、オートファゴソームが蓄積した状態であり、そこから細胞死が観察された。また、GGA添加1時間後からCTSBの酵素活性が高くなり、リソソーム膜の不安定性が増し、オートリソソーム形成が阻害されていることが示唆された。これらの事から、GGAはリソソーム中のCTSB活性を増加させ、リソソームの機能不全を誘導することにより、本来生存に働くオートファジーが完遂できないため、細胞死を誘導することが示唆された。
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