研究課題/領域番号 |
15K21312
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
新海 節 藤女子大学, 人間生活学部, 准教授 (50469475)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ピアノ伴奏 / ピアノ / 伴奏 / 歌曲伴奏 |
研究実績の概要 |
歌手があるフレーズを歌う際には、その音列や歌詞を意図した抑揚を持って歌うと考えられる。その抑揚はエネルギーの流れ(他の用語で説明するとすればダルクローズの「アナクルーシス、クルーシス、メタクルーシス」など)と捉えることができ、主にアゴーギグとダイナミクスにより展開されていく。より良い伴奏部の演奏表現は共演者に対しこのエネルギーの流れを意図し易くすることができる。 この点を踏まえ、伴奏ピアニスト特有の演奏表現に関して楽曲のピアノ伴奏部におけるダイナミクスの推移を分析するため、前年度に記録した伴奏ピアニストの演奏データ(MIDI)より、ダイナミクスを数値化するベロシティ値を抽出した。 演奏データの記録はPCの音楽編集ソフトを用いて作業を行ったが、音楽編集ソフトから統計ソフトへの演奏データの移行法が見いだせず、楽曲のベロシティ値を一音ごとに統計ソフトに打ち込んでいく作業となったため、膨大な時間がかかった。そのため、今年度は一つの楽曲(「コンコーネ50番」より第5番)を重点的に分析し、以下の傾向を見出すことができた。 ①歌唱を伴う伴奏部の演奏、伴わない伴奏部の演奏を比較した場合、同一の音では音量の差が生じることもあるが、フレーズ内における伴奏部の相対的なベロシティ値(ダイナミクス)の推移に差はあまり見られない。②基本的に、歌のフレーズ内の音のエネルギーに沿った音量変化をしており、歌のフレーズの頂点とその1拍前が強くなる傾向がある。③歌唱部においてフレーズの中途に2分音符+4分音符というパターンが出てくるときは2分音符の2拍目が強くなる傾向がある。④歌がクレッシェンドをする際には伴奏部はクレッシェンド指示の箇所で一旦、音量を落としてからクレッシェンドを始める傾向がある。 今後は、これらの傾向の妥当性を探るため、他の曲との比較や伴奏を専門としないピアニストの演奏との比較などを行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で前述したとおり、音楽編集ソフトから統計ソフトへの演奏データ移行に時間を要する結果となったが、学会発表などにおいて、成果発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は伴奏ピアニストとアマチュア・ピアニストの伴奏部の演奏の比較を行う。特に童謡などの子どものうたにおける伴奏部の演奏表現の比較分析を行う予定である。 さらに、再度、文献資料の収集を行い、日本において文献上、どのようにピアノ伴奏の役割が受容されていったかという点に関して検証する。 研究成果に関しては、論文、学会発表及び、演奏会等による演奏実践を通して発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属している大学が北海道にあるため、例年、学会参加などで旅費が多くかかるのであるが、今年度、発表した学会の大会が北海道で行われたため、旅費の削減となり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
主に資料文献、楽譜、音源媒体の購入を行う。また、旅費は学会発表や調査のために使用する。
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