研究課題
前年度の研究において、ダイナミクスに焦点をあて、伴奏ピアニスト特有の演奏表現に関する分析を行ったが、今年度は、伴奏ピアニスト特有の表現法を教員・保育者養成における伴奏教育へ応用することを検討するため、童謡などの子どもの歌を用いて、プロの伴奏ピアニストとアマチュアピアニスト(保育者養成校であるF大学の学生)の演奏を比較し、いくつかの傾向を見出すことができた。①プロの伴奏ピアニストとアマチュアピアニストの演奏を比較した場合、プロのほうが、ダイナミクスレンジが広く、ダイナミクスによる細かな表現を行っている。②前奏がない曲の場合、プロの演奏では、歌手の音量が把握しづらいため、伴奏部出だしの演奏の音量をおさえ、歌手の声量に注意を向けている。③プロの演奏では、伴奏部右手の旋律が歌唱部の旋律と同一の場合、基本的に歌詞の言葉の抑揚(イントネーション)に即したダイナミクスの調整が行われている。しかしながら、旋律の音型や音符の長さ、リズムパターンなど様々な要素により、言葉の抑揚から外れたダイナミクスの調整が行われることもあり、プロの演奏では、これらの様々な要素に起因する音量調節を瞬時に行い、歌手の歌いやすさを導出していることが推測できる。このような傾向より、養成校では、伴奏の指導の際、打鍵による音量調節法を十分に習得させること、歌い手の声量をよく把握すること、伴奏部の右手の旋律が歌唱部の旋律と同一の場合、その旋律を歌唱しているかのような音量調整(ピアノで歌う)を行うことが重要ではないかと考えた。
※雑誌論文などに当たらない研究発表(演奏実践研究)1.シューマン「子どものためのアルバム」より 1,13,15,33,35(「第14回北海道フーゴー・ヴォルフ協会定期演奏会」,2017.7,札幌ルーテルホール)2.リスト「伝説」,「ペトラルカの3つのソネット」ほか(「新海節 ピアノリサイタル-ピアノソロと歌曲伴奏の夕べ-」メゾソプラノ:岩森美里,2017.12,札幌コンサートホールキタラ小ホール)
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藤女子大学人間生活学部保育学科 教育実践報告集 第1号
巻: 1 ページ: 8-12
巻: 1 ページ: 19-29