外分泌腺開口分泌機構の解明を目指して、耳下腺アミラーゼ分泌を中心にMyristoylated alanine-rich C kinase substrate (MARCKS) の関与について検討した。今年度は、耳下腺腺房細胞で得られたMARCKSを介する細胞内シグナル伝達の共通性を検討するため、膵外分泌腺腺房細胞においてcAMPをセカンドメッセンジャーとするアミラーゼ分泌の実験系を立ち上げて研究を進め、以下の内容を得た。a) ラット膵外分泌腺腺房細胞にグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) を作用させると、アミラーゼ分泌が引き起こされた。 b) cAMP依存性プロテインキナーゼ (PKA) 阻害剤はGLP-1誘発性アミラーゼ分泌を部分的に抑制した。 c) GLP-1を作用させるとMARCKSのリン酸化が引き起こされた。 d) PKA阻害剤はGLP-1により引き起こされるMARCKSリン酸化を阻害した。 e) ホスホリパーゼD (PLD) 阻害剤はGLP-1刺激により引き起こされるMARCKSリン酸化を抑制した。 f) PLD阻害剤はGLP-1誘発性アミラーゼ分泌を部分的に抑制した。 g) MARCKS阻害ペプチドはGLP-1誘発性アミラーゼ分泌を部分的に抑制した。これらの結果から、膵外分泌腺においてGLP-1刺激によりcAMPをセカンドメッセンジャーとするアミラーゼ分泌が起こり、この細胞内シグナル伝達にはPLDの活性化やMARCKSのリン酸化が関与することが示唆された。このことから、PKAやPLD、そしてMARCKSがcAMP依存性アミラーゼ分泌の細胞内シグナル伝達を有する耳下腺と膵外分泌腺の両者に共通する分子であることが考えられた。よって、MARCKSの脂質ラフト上での開口放出への関与も共通する可能性が考えられた。
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