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2016 年度 実施状況報告書

細胞外Na+によるハムスター精子受精能獲得調節機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K21323
研究機関獨協医科大学

研究代表者

竹井 元  獨協医科大学, 医学部, 助教 (00708183)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード哺乳類精子 / 受精能獲得 / 鞭毛運動 / 超活性化 / Na+ / Na+/Ca2+ exchanger / Na+/K+ ATPase
研究実績の概要

細胞外のイオン、特にNa+が哺乳類精子の受精能獲得に及ぼす影響を明らかにするために、ハムスター精子を用いて研究を行っている。昨年度までの研究によりNa+/Ca2+ exchanger (NCX) 及びNa+/K+ ATPase (NKA) が超活性化の制御に関わることが明らかになってきた。本研究は細胞外Na+がどの様に哺乳類精子超活性化を制御するのかを明らかにすることで、超活性化発現制御機構を解明することを目的とし研究を行っている。
本年度に予定していた研究のうち、NCX等のNa+恒常性制御に関わる分子の探索は、市販の抗体では検出が困難であったため、RNA-seqによりハムスター精巣発現ライブラリを作成することとした。現在はシーケンスは完了しており、そのデータの解析中である。
また昨年度にouabainを用いてNKA α4サブユニットを特異的に阻害すると、運動精子率は変化させることなく超活性化の発現が抑えられることが発見されていたため、その際の精子鞭毛運動を詳細に解析した。すると、超活性化精子は運動開始直後と比べて振動数が減少し、屈曲の大きさが増加するのに対し、ouabainによってNKA α4サブユニットを特異的に阻害した精子では振動数の減少は起こらず屈曲の増加が抑えられることが分かった。その結果、微小管すべり速度はてNKA α4を阻害した精子と阻害していない精子で有意に変わらなかった。これはouabainが全体のダイニンの活性を変化させることなく、超活性化運動の際に起る波形の変化のみを抑えることを示しており、すなわちNKA α4サブユニットの活性が超活性化運動を発現するための鍵となる事が分った。現在はその下流でどの様な細胞内シグナルが起こっているのかを解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度までの研究により、細胞外Na+によりハムスター精子の超活性化及び鞭毛運動が調節されていることを明らかにし、その制御にNCXが関わっている事を明らかにし、さらに以上の内容をまとめた論文がReproduction誌に受理された。また、NCX, NKAなどハムスター精子におけるNa+恒常性を制御する分子を探索するために、ハムスター精子から抽出したRNAを用いてRNA-seqを行った。現在は外部の助力を得て得られたシーケンスデータの解析の最中である。更に先体反応の評価法についてはCBBを用いた方法を確立できたため、細胞外Na+が先体反応に及ぼす影響についても明らかになりつつある。また細胞内のNa+恒常性を制御する主たる分子であるNKAが、超活性化運動の発現に必須であることも分かってきた。以上より、概ね順調に進捗していると判断した。

今後の研究の推進方策

RNA-seqシーケンスデータの解析の終了次第、NCX, NKAを中心にNa+恒常性に関わりそうな分子のクローニングを行い、必要に応じて抗体を作成しタンパク質レベルの解析を行う予定である。また先体反応の評価法は確立したので、細胞外Na+に応じた先体反応の変化や、ouabain等のNa+恒常性に関わる分子に対する阻害剤が先体反応へ与える影響を調べる予定である。更に、受精能獲得時の細胞内環境がどのように変化するのか、またouabain等のNa+恒常性に関わる分子に対する阻害剤がその細胞内環境変化へどのように影響するのかを調べる予定である。具体的には、細胞内Na+濃度、細胞内pHや細胞内Ca2+濃度が経時的にどう変化するのか、また種々の阻害剤がそこへどう影響するのかを蛍光色素を用いて調べる予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初は沖縄で行われた第22回国際動物学会議に参加する予算を計上していたが、学生実習と日程が重なってしまったため参加できなかった。そのため、若干の繰越金が生じた。

次年度使用額の使用計画

研究に使用していたパソコンが経年劣化により故障してしまったため、パソコンを買い替えるための費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Non-genomic regulation and disruption of spermatozoal in vitro hyperactivation by oviductal hormones2016

    • 著者名/発表者名
      Masakatsu Fujinoki, Gen L. Takei and Hiroe Kon
    • 雑誌名

      The Journal of Physiological Sciences

      巻: 66 ページ: 207-212

    • DOI

      10.1007/s12576-015-0419-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulation of hamster sperm hyperactivation by extracellular Na+.2016

    • 著者名/発表者名
      Gen L. Takei and Masakatsu Fujinoki
    • 雑誌名

      Reproduction

      巻: 151 ページ: 589-603

    • DOI

      10.1530/REP-15-0367.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] γ-Aminobutyric acid suppresses enhancement of hamster sperm hyperactivation by 5-hydroxytryptamine2016

    • 著者名/発表者名
      Masakatsu Fujinoki and Gen L. Takei
    • 雑誌名

      Journal of Reproduction and Development

      巻: 63 ページ: 67-74

    • DOI

      10.1262/jrd.2016-091

    • 査読あり
  • [学会発表] ハムスター精子においてNa+/K+ ATPase α1は生存を、α4は超活性化をそれぞれ調節する2017

    • 著者名/発表者名
      竹井 元、藤ノ木 政勝
    • 学会等名
      第94回日本生理学会大会
    • 発表場所
      アクトシティ浜松 (静岡県浜松市)
    • 年月日
      2017-03-28 – 2017-03-30
  • [学会発表] 細胞外ナトリウムによるハムスター精子超活性化調節2016

    • 著者名/発表者名
      竹井 元、藤ノ木 政勝
    • 学会等名
      第109回日本繁殖生物学会大会
    • 発表場所
      麻布大学 (神奈川県相模原市)
    • 年月日
      2016-09-12 – 2016-09-15
  • [学会発表] Regulation of Hamster Sperm Hyperactivation by Na+ via an Action of Na+/Ca2+ Exchanger2016

    • 著者名/発表者名
      Gen L. Takei and Masakatsu Fujinoki
    • 学会等名
      12th International Congress of Cell Biology
    • 発表場所
      Prague Congress Centre (チェコ、プラハ)
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-25
    • 国際学会
  • [学会発表] 細胞外ナトリウムによるハムスター精子鞭毛運動調節2016

    • 著者名/発表者名
      竹井 元、藤ノ木 政勝
    • 学会等名
      日本アンドロロジー学会第35回学術大会
    • 発表場所
      前橋テルサ (群馬県前橋市)
    • 年月日
      2016-06-24 – 2016-06-25

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公開日: 2018-01-16  

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