・早期リハビリテーションの概念が定着しつつあり、多くの疾患でベッドサイドでの機能訓練が実施されている。対象者の多くの機能的目標は歩行能力の自立であるが、その前段階としてベッド座位からの起立-着座動作練習が多く行われている。この動作は日常生活 上の実施頻度が高い一方で、対象者の身体機能によって介助量が増加する動作である。その介助の一つとして、動作中に対象者の下腿が前傾しすぎないように介助者の手や膝などを用いてうまくコントロールすることが求められるが、この技術の習得は難しく、看護・ 介護場面での実践はほとんどみられない。 ・本研究では、動作の努力量や介助量を減らしながら、対象者の能動的な動作を促すために、短下肢装具による足関節運動の補助機能が起立-着座動作の努力量と介助量におよぼす影響について明らかにすることを目的としている。 ・平成28年度~29年度にかけて、足継手部分にコイルばねを装着し、足関節背屈制動および底屈補助の力源を具備した短下肢装具を試作した。平成29年度では、健常成人男性20名を対象として、装具非着用時・補助用ばねの強さ別に条件を設定し、起立-着座動作の下肢筋活動を表面筋電計を用いて計測した。結果として、立ち上がり動作中の膝関節伸展筋と足関節底屈筋の活動は補助用ばね装着時に装具非着用条件と比較して有意に減少することが認められた。しかし、足関節背屈筋の活動は有意な変化は認められなかった。このことから、立ち上がり動作時の下腿前傾運動をばねを用いて制動し、その後の足関節底屈運動を補助する装具を用いた場合、足関節周囲の筋活動のみならず膝関節への筋活動への影響を及ぼすことが明らかとなった。 ・今後の課題として、今回は運動学的分析および表面筋電図による筋活動の分析に留まっており、床反力や関節モーメントなどの運動力学的パラメータを用いた検討を行うことが必要である。
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