研究課題
本研究は,移植された腎臓の拒絶反応を病理画像処理により推定することを目的とし,病理標本中の糸球体や萎縮尿細管を抽出する技術の開発と,組織の経時的変化から拒絶反応の推定に取り組んでいる.今年度は,連携研究者から提供された26枚の病理標本画像を用いて,Whole Slide Imaging全体を使用した実験を行った.論文化に向けて,精度評価実験を行った.実験の結果,正常7症例において感度77%という結果であった.PAS染色の検討については,PAS染色された糸球体画像中の細胞核を認識,RGB色情報,テクスチャ情報(濃度共起行列)などを用いて自由にクラスタリングを行い,細胞核の特性を調査するソフトウェアの開発を行った.マルチスペクトル画像については,Bag of Featuresを用いてマルチスペクトル画像から特徴量を算出し,加えて色素量推定を用いて画像を色補正することで組織構造の認識精度が向上することを確認した.具体的には,BoFを用いた場合,RGB情報のみと比較して分類精度は6%向上した.また,色補正を用いることで更に18%向上した.以上の結果から,BoFと色補正を用いることで分類精度の向上を確認し,スペクトル情報と色補正によって組織分類が有効であることを確認した.組織障害の推定については,臨床データを対象に検討を行い,臨床データのみで80%程度の推定精度が得られることが分かった.病理画像の定量的情報から,組織障害が一定程度推定可能な事が示唆された結果と考えられる.しかし今回の検討では,臨床データとの相関を検討したが,最終的には病理診断に有効な情報となるかについての検討が必要であると考えられる.
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