研究課題/領域番号 |
15K21344
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
舛方 周一郎 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (40734538)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 比較環境政治 / ラテンアメリカ / 持続可能な開発 / 気候変動条約締約国会議 / 多国間交渉 / 気候変動政策 / 政策ネットワーク / 環境運動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、経済成長と環境保護の両立が迫られてきたラテンアメリカの新興諸国において、気候変動政策を実施する制度改革がどのように進展してきたのかを明らかにすることである。この目的を遂行するために、ブラジルとメキシコの事例を取り上げて政府・企業・市民の間で形成される政策ネットワークの役割を手掛かりとして、気候変動政策をめぐる政治過程の差異を分析する。 研究2年度の28年度は、ラテンアメリカの環境政治に関する文献を収集・整理するとともに、以下2点の現地調査を通じて、研究の成果を示すことができた。 (1)ブラジルのブラジリア大学を中心に調査を行い、COP21においてブラジル派遣団の一員を務めたブラジル環境省の気候変動担当高官と、ブラジルの環境政治を専門とする大学教員に対して聞き取りを行った。その結果、BASIC、ALBA、AILACに所属するラテンアメリカ諸国の気候変動政策をめぐる対外政策過程を類型化した。さらに、ラテンアメリカ諸国の視点から、主要グループ間における交渉過程を中心的な枠組みとする従来の研究では見落とされてきた気候変動交渉の多面性を解明した。 (2)メキシコのメキシコ大学院大学を中心に調査を実施し、メキシコ政治と環境政治に関する文献を収集しながら、大学教員・専門機関の研究員、NGO関係者に聞き取り調査を行った。その結果、メキシコの政治制度と気候変動政策の形成と実施に関する歴史的な背景を理解することができた。さらに大統領と官僚に権限が集中する政治制度の経路依存性の効果によって、メキシコの気候変動政策とエネルギー政策という異なる目標の間で利害が調整されるメカニズムを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に明示した作業工程はおおむね予定通り進んでいる。本研究が目指す国内の環境政治過程をめぐる比較分析の前段階として、パリ協定の合意に至るラテンアメリカ諸国の気候変動をめぐる対外政策過程を分析することで、気候変動交渉の多面性を解明することを試みた。 この分析のために事例選択の過程において、当初予定していたブラジルとメキシコに加えて、新たにボリビアの事例も分析の射程に入れることになった。結果として、当初の研究計画では想定していなかった気候変動交渉をめぐるボリビアの対外姿勢と国内政治過程を考察することになったが、今後、さらに詳細に検討が必要とされる課題であることがわかった。 なお、本年度の成果は、アメリカのボルティモアで開催されたInternational Studies Association(国際学会)を含む学会・シンポジウム4件と論文3件の執筆によって公表した。さらに、1月末には、本研究課題と密接に関連する博士論文を上智大学学事に提出した(2017度9月博士号取得見込み)。この事実は、本研究の進捗状況が順調であることを示す証左といえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目の28年度は本調査の結果を踏まえて、すでにメキシコとブラジルの気候変動政策の比較分析に関する論文の執筆作業を開始している。 研究計画3年目となる29年度は第一に、これらの研究の成果を、6月の日本比較政治学会年次大会(於:成蹊大学)と、来年4月アメリカのサンフランシスコにおいて予定されているInternational Studies Associationsで口頭発表する。さらに、二つの学会で発表時に受けたコメントを生かして、論文を改訂して研究雑誌に投稿する。 第二に、二年度に実施した本調査の結果を踏まえて、メキシコとブラジルの気候変動政策の比較分析に関する予備的な調査を実施する。現時点においては、特にメキシコの事例に関する先行研究と一次資料が不足しており、本務校の休暇期間を活用してメキシコの大学研究機関に籍を置きながら、気候変動政策ネットワークの形成と展開、さらに相克する気候変動政策とエネルギー政策への取り組みに関する文献収集を実施するとともに、大学教員や政策関係者に対する聞き取りを継続する。この調査で導き出された結果によっては、最終課題とする論文の分析枠組の再検討や仮説の修正を行う。
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